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IBD情報 > 診断と治療 潰瘍性大腸炎診断基準

潰瘍性大腸炎診断基準改訂案

(2010年2月改訂)

1. 定義

 主として粘膜を侵し,しばしばびらんや潰瘍を形成する大腸の原因不明のびまん性非特異性炎症である。WHOのCouncil for International Organization of Medical Siences(CIOMS)医科学国際組織委員会で定められた名称と概念は、つぎの通りである。(1973)

特発性大腸炎 idiopathic proctocolitis

An idiopathic, non-specific inflammatory disorder involving primarily the mucosa and submucosa of the colon, especially the rectum. It appears mainly in adults under the age of 30, but may affect children and adults over the age of 50. Its aetiology remains unknown, but immunopathological mechanisms and predisposing psychological factors are believed to be involved. It usually produces a bloody diarrhea and various degrees of systemic involvement, liability to malignant degeneration, if of long duration and affecting the entire colon.

(訳)主として粘膜と粘膜下層をおかす、大腸とくに直腸の特発性,非特異性の炎症性疾患。30歳以下の成人に多いが、小児や50歳以上の年齢層にもみられる。原因は不明で、免疫病理学的機序や心理学的要因の関与が考えられている。通常血性下痢と種々の程度の全身症状を示す。長期にわたり、かつ大腸全体をおかす場合には悪性化の傾向がある

 

2. 診断の手順  

 慢性の粘血・血便などがあり本症が疑われるときには、放射線照射歴、抗生剤服用歴、海外渡航歴などを聴取するとともに、細菌学的・寄生虫学的検査を行って感染性腸炎を除外する。次に直腸あるいはS状結腸内鏡検査を行って本症に特徴的な腸病変を確認する。このさい、生検を併用する。これだけの検査で多くは診断が可能であるが、必要に応じて注腸X線検査や全大腸内視鏡検査などを行って、腸病変の性状や程度、罹患範囲などを検査し、同時に他の疾患を除外する。

 

3. 診断基準

 次のa)のほか、b)のうちの1項目、およびc)を満たし、下記の疾患が除外できれば、確診となる。

a)
臨床症状:持続性または反復性の粘血・血便、あるいはその既往がある。

b)
@内視鏡検査:i)粘膜はびまん性におかされ、血管透見像は消失し、粗ぞうまたは細顆粒状を呈する。さらに、もろくて易出血性(接触出血)を伴い、粘血膿性の分泌物が付着しているか、ii)多発性のびらん、潰瘍あるいは偽ポリポーシスを認める。
A注腸X線検査:i)粗ぞうまたは細顆粒状の粘膜表面のびまん性変化、ii)多発性のびらん、潰瘍、iii)偽ポリポーシスを認める。その他、ハウストラの消失(鉛管像)や腸管の狭小・短縮が認められる。

c)
生検組織学的検査:活動期では粘膜全層にびまん性炎症性細胞浸潤、陰窩膿瘍、高度な杯細胞減少が認められる。いずれも非特異的所見であるので、総合的に判断する。寛解期では腺の配列異常(蛇行・分岐)、萎縮が残存する。上記変化は通常直腸から連続性に口側にみられる。

 b) c)の検査が不十分、あるいは施行できなくとも、切除手術または剖検により、肉眼的および組織学的に本症に特徴的な所見を認める場合は、下記の疾患が除外できれば、確診とする。


 除外すべき疾患は、細菌性赤痢、アメーバ性大腸炎、サルモネラ腸炎、キャンピロバクタ腸炎、大腸結核、クラジミア腸炎などの感染性腸炎が主体で、その他にクローン病、放射線照射性大腸炎、薬剤性大腸炎、リンパ濾胞増殖症、虚血性大腸炎、腸型ベーチェットなどがある。
<注1>
まれに血便に気付いていない場合や、血便に気付いてすぐに来院する(病悩期間が短い)場合もあるので注意を要する。

<注2>
所見が軽度で診断が確実でないものは「疑診」として取り扱い、後日再燃時などに明確な所見が得られた時に本症と「確診」する。

<注3>
Indeterminate colitis
クローン病と潰瘍性大腸炎の両疾患の臨床的、病理学的特徴を合わせ持つ、鑑別困難例。経過観察により、いずれかの疾患のより特徴的な所見が出現する場合がある。

 

4. 病態 (病型・病期・重症度)

A. 病状の拡がりによる病型分類

  全大腸炎 total colitis
  左側大腸炎 left-sided colitis
  直腸炎 proctitis
  右側あるいは区域性大腸炎 right-sided or segmental colitis

<注4>
左側大腸炎は、病変の範囲が脾彎曲部を越えていないもの。

<注5>
直腸炎は、前述の診断基準を満たしているが、内視鏡検査により直腸S状部(RS)の口側に正常粘膜を認めるもの。

<注6>
右側あるいは区域性大腸炎は、クローン病や大腸結核との鑑別が困難で、診断は経過観察や切除手術または剖検の結果を待たねばならないこともある。

<注7>
胃十二指腸にびまん性炎症が出現することがある。


 

B. 病期の分類

  活動期 active stage
  寛解期 remission stage

<注8>
活動期は血便を訴え、内視鏡的に血管透見像の消失、易出血性、びらん、または潰瘍などを認める状態。

<注9>
寛解期は血便が消失し、内視鏡的には活動期の所見が消失し、血管透見像が出現した状態。

 

C. 臨床的重症度による分類

  軽症 mild
  中等症 moderate
  重症 severe


診断基準は下記の如くである。

重症
中等症
軽症
1) 排便回数
6回以上

重症と軽症との中間

4回以下
2) 顕血便
(+++)
(+)〜(−)
3) 発熱
37.5℃以上
(−)
4) 頻脈
90/分以上
(−)
5) 貧血
Hb10g/dL以下
(−)
6) 赤沈
30mm/h以上
正常
   
<注10>
軽症の3)、4)、5)の(−)とは37.5℃以上の発熱がない。90/分以上の頻脈がない。Hb 10 g/dL以下の貧血がない、ことを示す。

<注11>
重症とは1)および2)の他に全身症状である3)または4)のいずれかを満たし、かつ6項目のうち4項目以上を満たすものとする。軽症は6項目すべて満たすものとする。

<注12>
左記の重症と軽症との中間にあたるものを中等症とする。

<注13>
重症の中でも特に症状が激しく重篤なものを劇症とし、発症の経過により、急性劇症型と再燃劇症型に分ける。劇症の診断基準は以下の5項目をすべて満たすものとする。

 
 @重症基準を満たしている。
 A15回/日以上の血性下痢が続いている。
 B 38℃以上の持続する高熱がある。
 C 10,000/mm3以上の白血球増多がある。
 D 強い腹痛がある。

 

 

D.活動期内視鏡的所見による分類

  軽度 mild
  中等度 moderate
  強度 severe


 診断基準は下表の如くである。

炎 症
内視鏡所見
軽 度
血管透見像消失/粘膜細顆粒状/発赤、アフタ、小黄色点
中等度
粘膜粗ぞう、びらん、小潰瘍/易出血性(接触出血)/粘血膿性分泌物付着/その他の活動性炎症所見
強 度
広汎な潰瘍/著明な自然出血
   
<注14>
内視鏡的に観察した範囲で最も所見の強いところで診断する。内視鏡検査は前処置なしで短時間で施行し、必ずしも全大腸を観察する必要はない。

 

E. 臨床経過による分類

  再燃寛解型 relapse-remitting type
  慢性持続型 chronic continuous type
  急性劇症型(急性電撃型) acute fulminating type
  初回発作型 first attack type
     
<注15>
慢性持続型は初回発作より6ヵ月以上活動期にあるもの。

<注16>
急性劇症型(急性電撃型)はきわめて激烈な症状で発症し、中毒性巨大結腸症、穿孔、敗血症などの合併症を伴うことが多い。
<注17>
初回発作型は発作が1回だけのもの。しかし将来再燃をきたし、再燃寛解型となる可能性が大きい。

 

F. 病変の肉眼所見による病型分類

  偽ポリポーシス型
  萎縮性大腸炎型

 


G. 治療反応性に基づく難治性潰瘍性大腸炎の定義

1.
厳密なステロイド療法下にありながら、つぎのいずれかの条件を満たすものとする。
  @ステロイド抵抗例(プレドニゾロン1−1.5mg/kg/日の1−2週間投与で効果がない)
  Aステロイド依存例(ステロイド漸減中の再燃)
2.
ステロイド以外の厳密な内科的治療下にありながら、頻回に再燃をくりかえすあるいは慢性持続型を呈するもの。




H.回腸嚢炎の診断基準

T. 概念
回腸嚢炎(pouchitis)は、自然肛門を温存する大腸(亜)全摘術を受けた患者の回腸嚢に発生する非特異的炎症である。原因は不明であるが、多くは潰瘍性大腸炎術後に発生し、家族性大腸腺腫症術後の発生は少ないことより、潰瘍性大腸炎の発症機序との関連が推定されている。

U. 回腸嚢炎の診断

1.
項目
a)
臨床症状
  1) 排便回数の増加 2) 血便 3) 便意切迫または腹痛 4)発熱(37.8℃以上)
b)
内視鏡所見
  軽 度:浮腫、顆粒状粘膜、血管透見像消失、軽度の発赤
  中等度:アフタ、びらん、小潰瘍#、易出血性、膿性粘液
  重 度:広範な潰瘍、多発性潰瘍#、びまん性発赤、自然出血
#:
staple line ulcerのみの場合は、回腸嚢炎の内視鏡所見とは区別して所見を記載する。
   
2.
診断基準
  少なくとも1つの臨床症状を伴い中等度以上の内視鏡所見を認める場合。また、臨床症状に関わらず内視鏡的に重症の所見を認める場合は回腸嚢炎と診断する。除外すべき疾患は、感染性腸炎(サルモネラ腸炎、キャンピロバクタ腸炎、腸結核などの細菌性腸炎、サイトメガロウィルス腸炎などのウィルス腸炎、寄生虫疾患)、縫合不全、骨盤内感染症、術後肛門機能不全、クローン病などがある。

出典:潰瘍性大腸炎診断基準(0.39Mb) 、潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針 平成27年度 改訂版 (平成28年1月31日)、厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患克服研究事業 「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」(鈴木班) 平成27年度分担研究報告書 p432-434, 2016年3月

 

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