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IBD情報 > 診断と治療 潰瘍性大腸炎の外科治療指針

(2016年1月改訂)

1. 手術適応
(1) 絶対的手術適応
@大腸穿孔、大量出血、中毒性巨大結腸症
A重症型、劇症型で強力な内科治療(ステロイド大量静注療法、血球成分除去療法、シクロスポリン持続静注療法・タクロリムス経口投与・インフリキシマブ点滴静注・アダリムマブ皮下注射など)が無効な例
B大腸癌およびhigh grade dysplasia(UC-W)
<注> @、Aは(準)緊急手術の適応である。
(2) 相対的手術適応
@難治例:内科的治療(ステロイド、免疫調節薬、血球成分除去療法など)で十分な効果がなく、日常生活が困難になるなどQOL(便意切迫を含む)が低下した例、内科的治療(ステロイド、免疫調節剤)で重症の副作用が発現、または発現する可能性のある例
A腸管外合併症:内科的治療に抵抗する壊疽性膿皮症、小児の成長障害など。
B大腸合併症:狭窄、瘻孔、low-grade dysplasia(UC-V)のうち癌合併の可能性が高いと考えられる例など。

 
2. 術式の選択
  主な術式は下記の5種類で、現在の標準術式は(1)、(2)である。術式は患者の全身状態、年齢、腸管合併症、治療薬剤の副作用などを考慮して選択する。
(1)

大腸全摘、回腸嚢肛門吻合術 ( IAA : Ileoanal anastomosis )
 直腸粘膜抜去を行い病変をすべて切除し、回腸で貯留嚢を作成して肛門(歯状線)と吻合する術式で、根治性が高い。通常は一時的回腸人工肛門を造設する。

(2) 大腸全摘、回腸嚢肛門管吻合術 ( IACA : Ileoanal canal anastomosis )
 回腸嚢を肛門管と吻合して肛門管粘膜を温存する術式である。回腸嚢肛門吻合術と比べて漏便が少ないが、肛門管粘膜の炎症再燃、 癌化の可能性については今後の研究課題である。
(3) 結腸全摘、回腸直腸吻合術
  直腸の炎症が軽度の症例、高齢者に行うことがある。排便機能が良好であるが、残存直腸の再燃、癌化の可能性があるので術後管理に留意する。
(4) 大腸全摘、回腸人工肛門造設術
  肛門温存が不可能な進行下部直腸癌例だけでなく、肛門機能不良例、高齢者などに行うことがある。
(5) 結腸亜全摘、回腸人工肛門造設術、S状結腸粘液瘻、またはHartmann手術
 侵襲の少ないのが利点であり、全身状態不良例に対して肛門温存術を行う前の分割手術の一期目として行う。

<注1> 分割手術としてHartmann手術を選択する場合は直腸閉鎖部の縫合不全による骨盤腹膜炎併発の危険性や、次回直腸切除の際の炎症性癒着により剥離が困難とならないようにするため、原則として腹腔内で直腸を閉鎖するほうがよい。
<注2> 小児成長障害に関しては思春期発来前の手術が推奨される。成長障害の評価として成長曲線の作成や手根骨のX線撮影などによる骨年齢の評価が重要であり、小児科医と協力し評価することが望ましい。
<注3> 高齢者は予備力が低く、免疫抑制効果の強い治療(ステロイド、シクロスポリン、タクロリムス、インフリキシマブ、アダリムマブなどの継続投与)によって感染性合併症(日和見感染による肺炎など)を併発して重篤な状態になることが少なくない。安全な手術、手術前後の合併症の予防のためには治療効果判定を早期に行い、効果が認められない症例には他の内科治療の選択は十分慎重に考慮して、時期を失することなく外科治療を選択することが重要である。
<注4> 本症に対する腹腔鏡補助下手術や小開腹による手術は通常の開腹術に比べて整容性の点で優れているが、重症で腸管の脆弱な症例や全身状態が不良で短時間での手術が必要な症例などでは適応を慎重に考慮する。本治療は専門施設で行うのが望ましい。
 
3. 周術期管理
  免疫抑制効果の強い治療(ステロイド、シクロスポリン、タクロリムス、インフリキシマブ、アダリムマブなどの継続投与)によって手術前後に感染性合併症(日和見感染による肺炎など)を併発することがあるため、的確な診断、治療を行う。
 術前ステロイド投与例では感染性合併症の増加だけでなく、吻合術例での縫合不全の危険性などがあり、可能であれば、術前にステロイドを減量する。また術後はステロイドカバーを行い、副腎機能不全に留意しながらステロイドを減量する。
 回腸人工肛門造設例では排液量が多いことから、術後の水分、電解質管理を適正に行う。
<注>

術後ステロイドカバー
 ステロイドを長期投与された患者では手術後のステロイド分泌が十分でなく、急性副腎機能不全を起こす可能性があり、ステロイドカバーが必要と考えられている。しかし明確なエビデンスに基づいた方法はなく、従来の報告と経験に基づいた投与法が行われている。
 対象に関してはプレドニゾロン5mg/日以下の投与例では通常の維持投与量以上の投与は不要とされている。またステロイド坐剤、注腸製剤を長期間使用した症例も副腎機能が低下していることがある。
 使用されるステロイド製剤は術直後には代謝の早いハイドロコーチゾンが用いられることが多く、術後当日と術後1日は200〜300mg、術後2日は100〜200mg、その後徐々に減量して、術後約7日で通常、経口プレドニゾロン15mg/日前後に変更し、十分に経過観察を行いながら速やかに減量、中止を試みる(*)。

(*)ステロイド減量時には急性副腎機能不全症の発生に留意して時間をかけて減量する。


潰瘍性大腸炎に対する主な手術術式

大腸全摘回腸嚢肛門吻合術
大腸全摘回腸嚢肛門管吻合術
結腸全摘、回腸直腸吻合術
大腸全摘、回腸人工肛門造設術
結腸(亜)全摘、回腸人工肛門造設術

 

出典:潰瘍性大腸炎外科治療指針(0.30Mb)、潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針 平成27年度 改訂版 (平成28年1月31日)、厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患克服研究事業 「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」(鈴木班) 平成27年度分担研究報告書 p442-444, 2016

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