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クローン病肛門部病変に対する治療指針

(2016年1月改訂)

T. 一般的事項
 クローン病において、肛門部は回盲部と同様に罹患頻度の高い部位であり、その病変は再発をくり返し、難治化することから、長期的にQOLを維持するためにも管理が重要となる。
 治療に際しては、局所の病態を的確に診断するだけでなく、腸病変とくに大腸病変の活動性を評価して治療法を決定し、局所の外科治療の選択には病変の制御とともに肛門機能にも配慮する。
 肛門部は癌合併頻度の高い部位であり、長期経過例に対しては臨床症状の変化に留意し、癌を疑う場合には積極的に組織学的検索(生検・細胞診)を行い早期発見に努める。



U. 診断的事項
 肛門周囲、肛門管を含めた局所の病態の評価は、経験ある外科医、肛門科医との連携の下、必要に応じて麻酔下での検索を行う(EUA:Examination under anesthesia)。
 画像検査としては、内視鏡検査、瘻孔造影、CT、MRI、経肛門的超音波検査を用いて肛門管から直腸周辺の炎症性変化を評価する。
 腸病変については、罹患部位、活動性を把握する。
 肛門機能についても、用手的診察、肛門内圧検査を用いて肛門括約筋機能を評価する。



V. 病態別治療指針
1.痔瘻・膿瘍
 軽症例(日常生活に支障のない程度の自覚症状)に対しては、切開排膿とともにメトロニダゾール(*)や抗菌剤(ニューキノロン系、セフェム系など)を投与する。
  中等症(持続性の疼痛、排膿)以上の症状がある場合には、seton法によるドレナージを第1選択とする。下部大腸に活動性病変がなく単純な痔瘻であれば、痔瘻根治術も選択肢の一つとなるが、術後創治癒に時間がかかること、および再発率の高いことを考慮して適応を決定する。
 複雑多発例や再発をくり返す場合には、痔瘻根治術の適応は控え、seton法ドレナージを継続する。
 薬物治療(免疫調節薬、生物学的製剤)を導入する場合は、ドレナージによって局所の感染巣を制御した後に開始する。
 日常生活を制限する程の高度症状(重症例)を諸治療によっても制御できない場合には人工肛門造設術を考慮する。

2.直腸(肛門管)−膣瘻
 効果的な内科的治療法はなく、膣からの便・ガスの排出が多い場合には外科治療を考慮する。局所的には経肛門的あるいは経膣的にadvancement flap法を行うが、人工肛門の併用を必要とする。

3.裂肛・肛門潰瘍
 中等度以上の症状があれば、併存する痔瘻・膿瘍の外科的処置に加えて、腸病変に準じて内科的治療を選択する。

4.皮垂
 腫張、緊満、疼痛により排便にも支障を来たす場合には、外科治療を考慮してもよい。痔瘻を誘発することもあり、切除範囲は最小限にとどめる。

5.肛門部狭窄
 肛門狭窄と直腸肛門狭窄を見極めて治療法を選択する。
 肛門狭窄(肛門管に限局した輪状狭窄)に対してはブジーを用いた拡張あるいは経肛門的拡張術の適応となる。
 下部直腸病変に関連した直腸肛門狭窄については、拡張術の効果は乏しく日常生活が困難な場合には人工肛門造設も考慮する。

6.補足
 重症度の評価には、自覚症状に客観的所見も加味された PDAI ( Perianal Crohn's Disease Activity Index ) も参考にする。ただし、Sexual activityの評価が難しい場合には、社会生活評価項目 (Social activity) に代えて、概ね5点を目途に外科医、肛門科医と外科治療について協議する。

 生物学的製剤の使用に際しては、短期的な有用性は示されているが、長期的な効果についてはevidenceが十分でなく、直腸肛門狭窄にも留意する。



W. 人工肛門の適応
 直腸肛門部癌の合併および著しいQOLの低下を来たす重症の肛門部病変に対して人工肛門造設の適応となる。
 重症の肛門部病変とは、seton法ドレナージや薬物療法の併用でも制御できない痔瘻、膣瘻、尿道瘻、線維性の強い直腸肛門狭窄、および肛門機能の低下により便失禁を来たした場合などが相当する。
 重症の肛門部病変に対する一時的人工肛門、永久的人工肛門(直腸切断術)の選択は個々の背景を考慮し、患者との協議の下に決定する。一時的人工肛門造設を行っても直腸肛門部病変は再燃ばかりでなく癌合併のリスクがあり、継続的な観察が必要である。
また、肛門病変増悪のリスクから、一時的人工肛門の閉鎖は難しいことが多い。

(*)現在保険適応には含まれていない。

 

 

Perianal Crohn's Disease Activity Index (PDAI)


Discharge
  1. no discharge
  2. minimal mucous discharge
  3. mod. mucous / purulent discharge
  4. substantial discharge
  5. gross fecal soling
Pain/stricture
  1. no activity restriction
  2. mild discomfort, no limited
  3. mod. discomfort, limited
  4. marked discomfort, limited
  5. severe pain, severe limitation
Restriction of sexual activity
  1. no restriction
  2. restriction
  3. mod. limitation
  4. marked limitation
  5. unable to engage
     

Type of perianal disease

  1. no perianal disease / tag
  2. anal fissure or mucosal tear
  3. <3 perianal fistula
  4. ≧3 perianal fistula
  5. anal sphinter ulceration or fistula with significant undermining

Degree of induration

  1. no induration
  2. minimal induration
  3. mod. induration
  4. substantial induration
  5. gross fluctuance / abscess

※Restriction of social activity

  1. no restriction
  2. slight restriction
  3. mod. limitation
  4. marked limitation
  5. unable to school or social work

※: modified PDAI
Irvine EJ : 1995 J.Clin Gastroenterology

 

出典:クローン病肛門部病変に対する治療指針(0.4Mb), 潰瘍性大腸炎・クローン病 治療指針 平成28年度 改訂 (平成29年1月25日). 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患克服研究事業 「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」(鈴木班) 平成28年度分担研究報告書. p357-358, 2017年3月

 

       
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