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潰瘍性大腸炎治療指針

(2016年1月改訂)

本治療指針の対象と位置づけ
  この治療指針は、一般の医師が潰瘍性大腸炎患者を治療する際の標準的に推奨されるものとして、文献的なエビデンス、日本における治療の現況、保険適応などをもとに、本研究班に参加する専門家のコンセンサスを得て作成された。また、患者の状態やそれまでの治療内容・治療への反応性などを考慮して、治療法を選択(本治療指針記載外のものを含めて)する必要がある。本治療指針に従った治療で改善しない特殊な症例については、専門家の意見を聞くあるいは紹介するなどの適切な対応が推奨される。
  本治療指針は、毎年必要な改訂を行う。

治療原則 
  重症度や罹患範囲・QOL(生活の質)の状態などを考慮して治療を行う。活動期には寛解導入治療を行い、寛解導入後は寛解維持治療を長期にわたり継続する。なお、寛解の判定は臨床症状や内視鏡を用いるが生検結果は参考にとどめる。
  重症例や全身障害を伴う中等症例に対しては、入院のうえ、脱水、電解質異常(特に低カリウム血症)、貧血、低蛋白血症、栄養障害などに対する対策が必要である。また、内科治療への反応性や薬物による副作用あるいは合併症などに注意し、必要に応じて専門家の意見を聞き、外科治療のタイミングなどを誤らないようにする。
  劇症型は急速に悪化し生命予後に影響する危険があるため、内科と外科の協力のもとに強力な治療を行い、短期間の間に手術の要、不要を決定する。
  小児例では、短期間に全大腸炎型に進展しやすい、重症化しやすいなどの特徴があり、成長障害にも配慮した治療が必要である。薬用量等については、小児治療指針を参照のこと。
  特に高齢者や免疫力の低下が疑われる患者では、強く免疫を抑制する治療に伴う副作用(ニューモシスチス肺炎などの日和見感染など)により致死的となることがあるため、ST合剤の予防投与などを積極的に考慮し、治療効果判定など早期に行い必要に応じて他の治療法や外科治療を選択する必要がある。
 中等症以上の症例では、ステロイド治療が必要となることが多い。ステロイド剤は重症度や治療歴などをもとに適正な用量で治療を開始し、漫然とした長期投与や減量中止後短期間における繰り返し投与は副作用や合併症につながることがあるので注意が必要である。通常、ステロイド使用時の初期効果判定は1〜2週間以内に行い、効果不十分な場合は他の治療法の追加や切り替えを検討する。
 腸管外合併症(壊疽性膿皮症など)の難治例も手術適応となることがあるので専門家に相談することが望ましい。
また、ステロイド抵抗例などの難治例や重症例では、血球成分除去療法やシクロスポリン点滴静注・タクロリムスの経口投与・インフリキシマブの点滴静注・アダリムマブの皮下注射などの選択肢があるが、必要に応じて専門家の意見を聞くことが望ましい。特に強い免疫抑制を伴う治療の重複使用においては、感染症などのリスクを考慮し慎重に行う。
 重症例・ステロイド抵抗例の治療は専門知識を要するため、可能な限り専門家に相談することが望ましい。
 B型肝炎ウイルス感染者(キャリアおよび既往感染者)に対し各種の免疫を抑制する治療を行う場合、HBVの再活性化によるB型肝炎を発症する可能性が考慮される。このため抗TNF-α抗体療法の導入に際しても、「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究班」の示す“免疫抑剃・化学療法により発症するB型肝炎対策ガイドライン(改訂版)”に基づいた医療的対応が必要である。

※免疫を抑制する治療としては、副腎皮質ステロイド(中等量以上)、アザチオプリン、6-MP、シクロスポリン、タクロリムス、抗TNF-α抗体製剤(インフリキシマブ・アダリムマブ)が該当する。

 抗TNF-α抗体製剤治療では結核併発のリスクが報告されており、本剤の投与に際しては十分な問診および胸部X線検査に加え、インターフェロンγ遊離試験またはツベルクリン反応検査を行い、疑わしい場合には積極的に胸部CT検査も併用する必要がある。これらスクリーニング検査で陽性所見が一つでもあれば潜在性結核感染を疑い本剤開始3週間前からINH(原則300mg/日)を6〜9ケ月間投与する。ツベルクリン反応等の検査陰性例や、抗結核薬による予防投与例からも導入後に活動性結核が認められた報告が有り、本剤治療期間中には肺および肺外結核の発現に留意し、経過観察を行う。

 患者が悪性疾患を併発した場合、原則としてチオプリン製剤・カルシニューリン阻害剤・抗TNFα抗体製剤は、悪性疾患の治療終了までは中止を検討する。またこれらの薬剤を悪性疾患の治療後あるいは既往歴を有する患者に使用する場合には、その薬剤の必要性と悪性疾患再発への影響を十分に検討し適応を判断する。

手術法など外科治療の詳細については、外科治療指針を参照のこと。

薬物療法
  薬物療法は、主として重症度と罹患範囲に応じて薬剤を選択する。寛解導入後も、再燃を予防するため寛解維持療法を行う。
  治療継続中に急性増悪を起こした場合や寛解維持療法中に再燃を起こした場合には、前回の活動期と同一の治療法が奏効しないことや、より重症化することが多いので、これらの点を参考にして治療法を選択する。重症例、難治例は専門家に相談するのが望ましい。


寛解導入療法

1. 直腸炎型
 5-ASA(5-アミノサルチル酸)製剤(ペンタサ®顆粒/錠・サラゾピリン®錠・アサコール®錠)による治療を行う。これで改善がなければ、製剤(経口剤、坐剤、注腸剤)の変更や追加、あるいは成分の異なる局所製剤への変更または追加を行う。

局所製剤: 5-ASA製剤では、坐剤としてはサラゾピリン®坐剤1日1〜2gやペンタサ®坐剤1日1g<注1>あるいは注腸剤としてはペンタサ®注腸1日1.0gを使用する。
ステロイドを含む製剤ではリンデロン®坐剤1日1〜2mgまたはステロイド注腸(プレドネマ®注腸1日20〜40mg、 ステロネマ®注腸1日3〜6mg)を使用する。
経口剤: ペンタサ®顆粒/錠1日1.5〜4.0g<注2>またはサラゾピリン®錠1日3〜4g<注3>、あるいはアサコール錠®1日2.4〜3.6gを使用する<注2>。
 上記の治療法が奏効した場合にはリンデロン®坐剤、ステロイド注腸を減量した後にこれらを中止し、寛解維持療法に移行する。

ステロイドを含む製剤は、長期投与で副作用の可能性があるので、症状が改善すれば漸減中止が望ましい。
以上の治療を最大限行ったにもかかわらず、寛解導入に至らない場合には、左側大腸炎・全大腸炎の中等症に準じるが、副腎皮質ステロイド剤の全身投与(特に大量投与)は安易に行うべきではない。また、軽度の症状が残る場合、追加治療のメリットとデメリットを考慮し、経過観察するという選択肢もある。
小児では短期間に全大腸炎型に進展しやすい。
 

2. 左側大腸炎型・全大腸炎型

A. 軽症
    ペンタサ®顆粒/錠1日1.5〜4.0g<注2>またはサラゾピリン®錠1日3〜4g<注3>、あるいはアサコール錠®1日2.4〜3.6g<注2>を経口投与する。ペンタサ®注腸を併用すると効果の増強が期待できる<注4>。左測大腸の炎症が強い場合はステロイド注腸の併用が有効な場合がある。
  2週間以内に明らかな改善があれば引き続きこの治療を続け、可能ならステロイド注腸は漸減中止する。寛解導入後は後述の寛解維持療法を行う。
  改善がなければ以上に加えて中等症(1)【プレドニゾロン経口投与】の治療を行う。
左側大腸炎型は罹患範囲が脾彎曲を超えないものと定義されている。
   
B. 中等症
基本的には軽症に準じてよいが、
(1) 炎症反応や症状が強い場合は、軽症の治療に加えてプレドニゾロン1日30〜40mgの経口投与を初期より行ってもよい。
 また軽症に準じた治療で2週間以内に明らかな効果がない場合や途中で増悪する場合もプレドニゾロン1日30〜40mgの経口投与を併用する。
 これで明らかな効果が得られたら、20mgまで漸次減量し、以後は2週間毎に5mg程度ずつ減量する。ステロイド注腸はプレドニゾロンの経口投与を中止するまで続けても良い。その後は軽症に準じて治療継続を原則とする。
(2) プレドニゾロンの減量に伴って増悪または再燃が起こり離脱も困難な場合(ステロイド依存例)は、難治例の(2)の【ステロイド依存例】の治療を行う。
(3) プレドニゾロンの経口投与を行っても、1〜2週間以内に明らかな効果が認められない時は、原則として入院させ重症の(1)、(2)または難治例の(1)の【ステロイド抵抗例】の治療を行う。
   
C. 重症
(1) 入院のうえ全身状態の改善に対する治療を行う。常に手術治療の適応に注意し、必要に応じて外科医等と連携して治療に当たる。
(2)

薬物療法としては、当初よりプレドニゾロン1日40〜80mg(成人においては1〜1.5mg/kgを目安とし、最大で1日80mg程度とする。)の点滴静注を追加する。さらに症状や状態に応じてペンタサ®顆粒/錠1日1.5〜4gまたはサラゾピリン®錠1日3〜4gの経口投与やアサコール錠®1日2.4〜3.6g、及び注腸剤を併用しても良い。
 これで明らかな効果が得られたら、プレドニゾロンを漸次減量し40mgで寛解導入を期し、その後は2週間毎を目安とし30mg、20mgと病態に応じて減量し、以後は中等症の(1)【プレドニゾロン経口投与】、(2)【ステロイド依存例】に準じた治療を行う。必要と思われる症例には、当初より難治例の(1)の【ステロイド抵抗例】の治療を行ってもよい。

(3) 前項の治療を行っても1〜2週間程度で明らかな改善が得られない場合(ステロイド抵抗例)は、難治例の(1)に従い血球成分除去療法<注6>・シクロスポリン(サンディミュン®)持続静注療法<注7>・タクロリムス(プログラフ®)経口投与<注8>・インフリキシマブ゙(レミケード®)の点滴静注<注9>・アダリムマブ(ヒュミラ®)皮下注射<注10>のいずれかの治療法を行う。
  なお、これらの選択肢のうち一つの治療法で効果が不十分な場合に安易に次々と別の治療法を試すことは慎重であるべきで、外科治療の考慮も重要である。
(4) 以上の治療でも明らかな改善が得られない、または改善が期待できない時は、すみやかに手術を考慮する。
 
D. 劇症型 (急性劇症型または再燃劇症型)
 劇症型は、急速に悪化し生命予後に影響する危険があるため、外科医との密接な協力のもと、緊急手術の適応を考慮しつつ、次のように取り扱う。
(1) ステロイド大量静注療法を行う<注5>。この際、経口摂取を禁じ、経静脈的栄養補給を行う。大量静注療法の効果判定は、外科医等と連携の上、手術時機を失することの無いよう早期に行う。
(2) 以上の治療で激烈な症状のほとんどが消失した場合は、この時点から重症の(1)、(2)に従いステロイド大量投与による治療に移行する。
(3) (1)の治療を行っても症状が悪化する場合、あるいは早期に症状の明らかな改善が得られない場合はシクロスポリン持続静注療法<注7>、タクロリムスの経口投与<注8>を試みてもよいが、改善の無い例または改善が期待できない例では時期を失することなく緊急手術を行う。

重症例、特に劇症型では中毒性巨大結腸症や穿孔を起こしやすいので、腹部所見(膨隆、腸雑音など)に留意し、適宜腹部単純X線撮影などによる観察を行う。

 
E. 難治例
  適正なステロイド使用にもかかわらず、効果が不十分な場合(ステロイド抵抗例)と、ステロイド投与中は安定しているがステロイドの減量に伴い再燃増悪するステロイド依存例等よりなる。難治例の治療に当たっては、これまで投与した薬物による副作用、病態や治療による患者QOLの状態などによる手術適応を考慮し、それぞれのメリット・デメリットなどを患者と相談の上で治療法を選択する。
(1) ステロイド抵抗例
 ステロイドによる適正な治療にもかかわらず、1〜2週間以内に明らかな改善が得られない場合である。
  重症度が中等症以上では血球成分除去療法やタクロリムスの経口投与<注8>・インフリキシマブの点滴静注<注9>・アダリムマブ皮下注射<注10>シクロスポリンの持続静注が選択可能である。
  中等症で重症度が高くない例では白血球除去療法が推奨される。重症度が高く経口摂取が不可能な劇症に近い症例ではシクロスポリンの選択が推奨される。これらで寛解導入された場合は寛解維持療法の項に示すようにアザチオプリンや6-MPによる寛解維持療法<注11>に移行する。なお、インフリキシマブの点滴静注で寛解に導入された場合は8週毎の投与、アダリムマブの皮下注射で寛解に導入された場合は2週毎の投与による寛解維持療法が選択可能である。 
 ステロイド抵抗例のなかに、クロストリジウム感染やサイトメガロウイルス感染の合併による増悪例が存在する。サイトメガロウイルス腸炎の合併症例に対しては抗ウイルス剤の併用が有効な場合がある。
   
サイトメガロウイルス感染合併例の典型的内視鏡所見として下掘れ状の円形潰瘍を形成する。診断には末梢血による診断(アンチゲネミア:C7-HRP等によるウイルス感染細胞数の測定)、生検病理所見による核内封入体の証明や免疫染色によるウイルス抗原の同定、あるいはPCRによるウイルスの検出が行われるが判断基準は議論がある。
   
(2)

ステロイド依存例
  プレドニゾロンの減量に伴って増悪または再燃が起こり離脱も困難な場合である。通常、免疫調節薬であるアザチオプリン(イムラン®・アザニン®など)50〜100mg/日または6-MP(ロイケリン®)30〜50mg/日を併用する<注9>。これらの効果発現は比較的緩徐で、1〜3ケ月を要することがある。
  これが有効で副作用がない時は、上記の免疫調節薬を開始して1〜2ケ月後に経口プレドニゾロンを徐々に減量、中止する。寛解導入後は副作用に注意し適宜採血などを行いながら寛解維持療法としての投与を続ける。
  上記で効果不十分あるいは免疫調節薬不耐例で活動期には、血球成分除去療法<注6>やタクロリムス経口投与<注8>やインフリキシマブの点滴静注<注9>やアダリムマブ皮下注射<注10>も考慮する。

(3) これらの治療で効果が不十分、QOL(生活の質)の低下した例では手術を考慮する。
(4)

小児では成長障害がみられる例においても手術を考慮する。

 
F.
中毒性巨大結腸症
   重篤な症状を伴って、結腸、特に横行結腸の著明な拡張を起こした状態である。直ちに緊急手術を行うか、外科医の協力のもとに短期間劇症の強力な治療を行い、所見の著明な改善が得られない場合は緊急手術を行う (外科療法の項参照)。
仰臥位腹部単純X線撮影で、横行結腸中央部の直径が6cm以上の場合は本症が考えられる。


寛解維持療法

 以下の 5-ASA 製剤の経口剤投与または局所治療の単独または併用を行う。直腸炎型の寛解維持では局所治療の単独あるいは併用も有用である。
経口剤: ペンタサ®顆粒/錠1日1.5〜2.25g<注12>またはサラゾピリン®錠 1日2gあるいはアサコール錠®1日2.4gを投与する。
局所治療: ペンタサ®注腸1日1g<注12>またはサラゾピリン®坐剤 1日0.5g〜1gやペンタサ®坐剤1日1g<注1>を使用する。
 なお、ステロイド抵抗例や依存例などでの難治例では原則として免疫調節薬による寛解維持治療を行う。また、インフリキシマブで寛解導入を行った例では8週ごとのインフリキシマブ投与、アダリムマブで寛解導入を行った例では2週ごとのアダリムマブ投与による寛解維持療法を行っても良い。
  ※ ステロイドには長期の寛解維持効果が乏しいことが知られている。
 
<注1> ペンタサ®坐剤は病型によらず直腸部の炎症性病変に対し有用である。
<注2> 寛解導入療法としてペンタサ®顆粒/錠は国内外の報告より、高用量の効果が高いことから、1日4g投与が望ましい。またアサコール錠®では1日3.6gが望ましい。小児でも高用量の効果が高いことが知られている。
<注3> サラゾピリン®錠は発疹のほか溶血や無顆粒球症、肝機能障害なども起こり得るので、定期的に血液検査や肝機能検査を行う。また、男性の場合は精子の抑制作用も報告されている。
<注4> ペンタサ®顆粒/錠経口投与とペンタサ®注腸を併用する場合には、経口4.0gと注腸1.0gの併用が望ましい。
<注5>

ステロイド大量静注療法
@全身状態の管理。
A水溶性プレドニゾロン40〜80mg(成人では1〜1.5mg/kgを目安とし,最大で1日80mg程度とする)。
  小児では水溶性プレドニゾロン1日1.0〜2.0mg/kgを目安とし,最大で1日80mg程度とする。
B小児ではメチルプレドニゾロンのパルス療法が選択されることもある。
Cステロイド大量静注療法の効果判定は、手術時機を失することのないように速やかに行う。

<注6> 血球成分除去療法
  アダカラム®を用いて顆粒球・単球を吸着除去する顆粒球除去療法(GMA)とセルソーバ®を用いて顆粒球・単球・リンパ球を除去する白血球除去療法(LCAP)がある。
  原則1クール計10回とし、劇症では計11回まで保険適応である。通常週1回行うが、症状の強い症例などでは週2回行ったほうが効果が高い。治療中に増悪する症例や無効と判断した症例は、手術や他の治療法へ変更する。重症例に行う場合には、比較的早い時期から併用すべきであり、有効性の判定も早期(2週間程度)に行うべきである。なお、本治療は専門施設で行うのが望ましい。
<注7> シクロスポリン持続静注療法(*)
  シクロスポリン1日量2〜4mg/kgを24時間持続静注投与で開始し、血中濃度を頻回に測定しながら、200〜400ng/mL程度を目安として維持するよう投与量を調節する。
  改善が見られないときや病状が増悪したり、重篤な副作用(感染症、腎不全)が出現したりする際は、手術や他の治療法へ変更する。
  投与後1週間以内に明らかな改善効果を認めた場合は、最大14日間まで静注を継続する。静注中止後は、原則としてアザチオプリンあるいは6-MP(*)の経口投与を直ちに開始し寛解維持療法に移行する。
  本治療は、血中濃度の厳密な管理が必要であること、重篤な感染症や腎不全の副作用がありうることから、専門施設で行うのが望ましい。
<注8> タクロリムス経口投与
  タクロリムスを用いる際は当初は高トラフを目指す(10〜15ng/mL)がその後は低トラフ(5〜10ng/mL)にする。寛解導入後は、アザチオプリンや6-MP(*)による寛解維持療法に移行する。腎障害・手指振戦などの副作用に注意する。なお、本治療は専門病院で行うのが望ましい。
<注9> インフリキシマブ点滴静注
  インフリキシマブは初回投与後さらに第2週、第6週に投与し、有効な場合は維持療法として以後8週間の間隔で投与が可能である。事前に感染症のチェック等を十分行い、投与時反応に対する処置が可能な状態で5mg/kgを2時間以上かけて点滴静注する。なお、投与時反応が無ければ3回目以後は、点滴速度を最大で1時間あたり5mg/kgまで短縮することができるが、副作用の発現に注意する。
  投与時反応とは、投与中あるいは投与終了後2時間以内に出現する症状で、アナフィラキシー様の重篤な時は投与を中止し、全身管理を行う。インフリキシマブの副作用として、免疫抑制作用による結核菌感染の顕性化、敗血症や肺炎などの感染症、肝障害、発疹、白血球減少などが報告されている。なお、本治療は専門施設で行うのが望ましい。
<注10> アダリムマブは初回160mgの皮下注射を行い、2週間後に80mgの皮下注射を行う。その後は40mgの皮下注射を2週間ごとに寛解維持療法として行う。条件が満たされれば、患者自身による自己注射も可能である。
<注11> アザチオプリンや6-MP(*)の副作用として、白血球減少、胃腸症状、膵炎、肝機能障害、脱毛などが起こり得る。通常アザチオプリンでは50mg/日程度、6-MP(*)では30mg/日程度より開始し、副作用や効果をみながら適宜増減する。
  上記のような副作用は投与開始後早期に起こることがあるため、投与開始早期は頻回に血液検査を行い(投与開始後1〜2週間を目安にし、その後は数週間おき)、白血球数減少やその他の異常が発現した場合程度に応じて減量、または一時中止する。
<注12> ペンタサ®顆粒/錠1日1.5〜2.25gによる寛解維持の場合、コンプライアンスを改善するために1日1回投与が望ましい。2g1日1回投与は1g1日2回投与よりも有用という海外のエビデンスがある。また、ペンタサ®顆粒/錠とペンタサ®注腸1日1.0gの2〜3日に1回の間欠投与や週末2日間の併用投与も有用である。
 小児ではペンタサ®顆粒/錠30〜60mg/kg/日を、ペンタサ注腸®は1日1.0gを使用する。
 

(*)現在保険適応には含まれていない。

 

 

平成27年度潰瘍性大腸炎治療指針(内科)

寛解導入療法      
  軽 症 中等症 重  症 劇 症









経口剤:5-ASA製剤
注腸剤:5-ASA注腸、ステロイド注腸

※中等症で炎症反応が強い場合や上記で改善ない場合はプレドニゾロン経口投与
※さらに改善なければ重症またステロイド抵抗例への治療を行う
※直腸部に炎症を有する場合はペンタサ坐剤が有用
・プレドニゾロン経口あるいは点滴静注

※状態に応じ以下の薬剤を併用
経口剤:5-ASA製剤
注腸剤:5-ASA注腸、ステロイド注腸

※改善なければ劇症またはステロイド抵抗例の治療を行う
※状態により手術適応の検討

・緊急手術の適応を検討

※外科医と連携のもと、状況が許せば以下の治療を試みてもよい。
ステロイド大量静注療法
・タクロリムス経口
・シクロスポリン持続静注療法*

※上記で改善なければ手術



経口剤:5-ASA製剤
坐剤:5-ASA坐剤、ステロイド坐剤
注腸剤:5-ASA注腸、ステロイド注腸  ※安易なステロイド全身投与は避ける


ステロイド依存例 ステロイド抵抗例
免疫調節薬:・アザチオプリン・6-MP*
※(上記で改善しない場合):血球成分除去療法・タクロリムス経口・インフリキシマブ点滴静注・アダリムマブ皮下注射を考慮してもよい
中等症:血球成分除去療法・タクロリムス経口・インフリキシマブ点滴静注・アダリムマブ皮下注射
重症:血球成分除去療法・タクロリムス経口・インフリキシマブ点滴静注・アダリムマブ皮下注射・シクロスポリン持続静注療法*
※アザチオプリン・6-MP*の併用を考慮する
※改善がなければ手術を考慮
寛解維持療法
  非難治例 難治例
5-ASA製剤(経口剤・注腸剤・坐剤) 5-ASA製剤(経口剤・注腸剤・坐剤)
免疫調節薬(アザチオプリン、6-MP*)、インフリキシマブ点滴静注**、アダリムマブ皮下注射**

*:現在保険適応には含まれていない、**:インフリキシマブ・アダリムマブで寛解導入した場含
5-ASA経口剤(ペンタサ®顆粒/錠、アサコール錠®、サラゾピリン錠®) 5-ASA注腸剤(ペンタサ注腸®) 5-ASA坐剤(ペンタサ坐剤®、サラゾピリン坐剤®
ステロイド注腸剤(プレドネマ注腸®、ステロネマ注腸®) ステロイド坐剤(リンデロン坐剤®

※(治療原則)内科治療への反応性や薬物による副作用あるいは合併症などに注意し、必要に応じて専門家の意見を聞き、外科治療のタイミングなどを誤らないようにする。薬用量や治療の使い分け、小児や外科治療など詳細は本文を参照のこと。

 

潰瘍性大腸炎 フローチャート

 

潰瘍性大腸炎 難治例の治療
 

 

出典:潰瘍性大腸炎治療指針(0.71Mb), 平成27年度潰瘍性大腸炎治療指針(内科)(0.15Mb), 潰瘍性大腸炎フローチャート(0.07Mb), 潰瘍性大腸炎難治例の治療(0.05Mb)、潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針 平成27年度 改訂版 (平成28年1月31日)、厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患克服研究事業 「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」(鈴木班) 平成27年度分担研究報告書 p435-441, 2016

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