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医療関係者の方へ

診断と治療:潰瘍性大腸炎の治療指針

2019年3月改訂

本治療指針の対象と位置づけ

この治療指針は、一般の医師が潰瘍性大腸炎患者を治療する際の標準的に推奨されるものとして、文献的なエビデンス、日本における治療の現況、保険適応などをもとに、本研究班に参加する専門家のコンセンサスを得て作成された。また、患者の状態やそれまでの治療内容・治療への反応性などを考慮して、治療法を選択(本治療指針記載外のものを含めて)する必要がある。本治療指針に従った治療で改善しない特殊な症例については、専門家の意見を聞くあるいは紹介するなどの適切な対応が推奨される。
本治療指針は、毎年必要な改訂を行う。

平成30年度改訂の要点と解説

1.劇症型に対するインフリキシマブ点滴静注投与

平成29年度版においては劇症型に対する内科治療としてはステロイド大量静注療法、タクロリムス経口、シクロスポリン持続静注療法が記載されていた。抗TNF-α製剤のインフリキシマブ点滴静注療法も急性重症潰瘍性大腸炎においてシクロスポリン持続静注療法と同等の手術回避率が報告されており1-3)、本年度改訂において劇症型の治療としてインフリキシマブ点滴静注を追記した。ただし、海外の文献は急性重症の潰瘍性大腸炎患者を対象とした報告であり、日本の劇症型とは異なる患者背景となっている。

<参考文献>
1. Laharie D, et al. Lancet. 2012 1 ; 380(9857): 1909-1914.
2. Williams JG,et al. Lancet Gastroenterol Hepatol. 2016; 1 (1):15-24.
3. Narula N, et al. Am J Gastroenterol. 2016 ; 111(4): 477- 491.

2.難治性に対するトファシチニブ経口投与とベドリズマブ点滴静注投与

2018年に潰瘍性大腸炎の治療薬としてトファシチニブ(ゼルヤンツ®)、ベドリズマブ(エンタイビオ®)が新たに承認された。両薬剤ともに適応は既存治療に抵抗性の中等症から重症の潰瘍性大腸炎に限定される。経口タクロリムス、抗TNF-α製剤がすでに難治性潰瘍性大腸炎の治療薬として使用されており、両薬剤の承認により選択肢が増えたことでどのような患者に投与するべきか実地医家において混乱が生じることが予想される。そのため両薬剤について大規模臨床試験を含めた文献を検索し、それに基づいて治療指針案を作成した。

トファシチニブ(ゼルヤンツ®)の特性と臨床成績

インターロイキンをはじめとするサイトカインのシグナル伝達にはヤヌスキナーゼ(Janus kinase,JAK)の作用が必要である。JAKはサイトカインが結合した受容体と下流のSTAT(Signal transducers and activators of transcription)の両者をリン酸化することでシグナルを伝達するが、トファシチニブはJAKを阻害することでシグナル伝達を抑制する。JAKにはJak1,2,3、Tyk2の4種類が存在し、トファシチニブはJak1,2,3に親和性を示しpan JAK阻害剤に分類される。

トファシチニブの大規模第Ⅲ相二重盲検プラセボ比較試験(OCTAVE試験)は寛解導入試験(OCTAVE 1&2)と寛解維持試験(OCTAVE Sustain)からなる1)。OCTAVE1と2試験の対象は、18歳以上、中等症~重症(Mayoスコア6-12、直腸出血サブスコア1-3、内視鏡的サブスコア2または3)の活動性で、副腎皮質ステロイド、AZA、6-MP、インフリキシマブ、アダリムマブの少なくとも1剤に対して抵抗性もしくは副作用を示した患者であった。OCTAVE 1&2試験で有効性を示した患者がOCTAVE Sustainにエントリーされた。主要評価項目はOCTAVE 1&2試験では8週における臨床的寛解(Mayo score2以下、いずれのサブスコアも1を越えない、直腸出血サブスコア0、のすべてを満たすもの)とされた。OCTAVE Sustainの主要評価項目は52週時点での臨床的寛解とされた。OCTAVE試験において、寛解導入ではトファシチニブ投与群(10mgを1日2回)が、寛解維持においてもトファシチニブ投与群(5mgまたは10mgを1日2回)が、プラセボ群と比較し有効性を示した。有効性に関する日本人の層別解析の結果もグローバル全体と同じ傾向であった2)。トファシチニブの中等症~重症の潰瘍性大腸炎に対する有効性は他の試験でも報告されている3-7)。トファシチニブの効果発現時期についてはOCTAVE 1,2試験のサブ解析では試験開始3日後の1)便回数スコアの推移、2)実際の1日の便回数推移、3)血便スコアの推移、いずれもトファシチニブ群においてプラセボ群に比して有意に減少が認められた8)

第Ⅱ相試験のpharmacokinetics解析ではトファシチニブの平均およびトラフ血漿濃度は投与量に比例し、投与量および血漿濃度の上昇とweek 8で臨床寛解になる患者比率は相関していた。ただし十分量(10mgまたは15mg b.i.d.) 投与された患者群で寛解に至った人とそうでない人で血漿濃度に差はなかった。投与前の重症度は効果と相関し、Mayo 8点を越した人の寛解率は、8点以下の人の寛解率の約半分であった9)

有効性に関する生物学的製剤との比較
抗TNF-α抗体製剤治療歴がない中等症~重症の潰瘍性大腸炎に対するトファシチニブ、抗TNF-α抗体製剤(インフリキシマブ、アダリムマブ、ゴリムマブ)、ベドリズマブの寛解導入、維持効果を比較したネットワークメタ解析では、トファシチニブと他の4剤の間のindirect comparisonsでは統計学的な有意差はなかった10)。また、抗TNF-α抗体製剤3剤、ベドリズマブ、トファシチニブの潰瘍性大腸炎に対するRCTのデータを使用したネットワークメタ解析では1st lineで使用した場合トファシチニブは他の生物学的製剤と遜色はなく、2nd lineで使用した場合において唯一プラセボより有意に寛解導入および粘膜治癒において優れていた11)

安全性
OCTAVE 1&2試験では、全感染症と重篤な感染症の頻度はトファシチニブ群のほうがプラセボ群より高かった。維持試験では、重篤な感染症の頻度は各群で同程度であったが全感染症と帯状疱疹ウイルス感染の頻度はトファシチニブ群のほうがプラセボ群より高かった。またトファシチニブは脂質高値に関連していた1)。第Ⅱ相試験と第Ⅲ相試験(OCTAVE)、オープンラベル、long term extension試験を含んだ全体のコホートにおける安全性解析では、維持試験において帯状疱疹の増加がみられ、5mgでは2.1倍(有意差なし)、10mgでは6.6倍(有意差有り)と用量依存性が認められた。全体のコホートでは帯状疱疹リスクは4.1倍であった。他の有害事象では有意なものはなかった12)。帯状疱疹のリスク因子としては、維持期における投与量、65才以上、アジア人が因子として抽出され、多変量解析では年齢、試験前の抗TNFα不応が独立したリスク因子であると報告されている13)。なお抗TNF-α抗体製剤(インフリキシマブ、アダリムマブ、ゴリムマブ)、ベドリズマブ、トファシチニブのRCTデータを使用したネットワークメタ解析において、トファシチニブはプラセボと比較して有意に感染症発症リスクが高かったと報告されている11)。術後合併症に対する影響を検討した報告、妊婦や小児における投与報告はまだ十分ではない14)

<参考文献>
1. Sandborn WJ, et al. N Engl J Med. 2017 4; 376(18): 1723-1736.
2. Motoya S, et al. Intest Res. 2018 ; 16(3): 499-501.
3. Paschos P, et al. Ann Gastroenterol. 2018 ; 31(5): 572-582.
4. Paschos P, et al. Aliment Pharmacol Ther. 2018 ; 48(11-12): 1174-1185.
5. Panés J, et al. J Crohns Colitis. 2018 24 ; 12(2): 145-156.
6. Panés J, et al. J Crohns Colitis. 2016 ; 10(11): 1310-1315.
7. Sandborn WJ, et al. N Engl J Med. 2012 16 ; 367(7): 616-624.
8. Hanauer S, et al. Clin Gastroenterol Hepatol. 2019 ; 17(1): 139-147.
9. Mukherjee A, et al. Br J Clin Pharmacol. 2018 ; 84(6): 1136-1145.
10. Bonovas S, et al. Aliment Pharmacol Ther. 2018 ; 47(4): 454-465.
11. Singh S, et al. Aliment Pharmacol Ther. 2018 ; 47(2): 162-175.
12. Sandborn WJ, et al. Clin Gastroenterol Hepatol. 2018 Nov 23. pii : S1542-3565(18)31278-3.
13. Winthrop KL, et al. Inflamm Bowel Dis. 2018 15 ; 24(10): 2258-2265.
14. Mahadevan U, et al. Inflamm Bowel Dis. 2018 29 ; 24(12): 2494-2500.

ベドリズマブ(エンタイビオ®)の特性と臨床成績

リンパ球が末梢血管から組織へ浸潤する際には、リンパ球上に発現した接着因子(インテグリン)と血管内皮細胞上に発現した接着因子が結合することでリンパ球を血管内皮上にとどめ組織への浸潤が開始される。この組み合わせは各臓器で異なっており、腸管へのリンパ球の浸潤にはリンパ球上のα4β7インテグリンと血管内皮細胞上のMAdCAM-1の結合が必要となる。ベドリズマブはα4β7インテグリンに対するIgG1ヒト化モノクローナル抗体製剤で、リンパ球の腸管組織への浸潤を阻害することで炎症を鎮静化させる。

ベドリズマブの大規模第Ⅲ相二重盲検プラセボ比較試験(GEMINI 1試験) は寛解導入試験と寛解維持試験を組み合わせた試験デザインで行われ、主要評価項目は寛解導入試験と寛解維持試験それぞれに設定された。対象は、副腎皮質ステロイド、免疫抑制剤(6-MPやAZAなど)、抗TNF-α抗体製剤のうち少なくとも1剤以上に抵抗性あるいは効果不十分だった18-80歳の中等症以上(Mayoスコア6-12)の潰瘍性大腸炎患者であった。本試験においてベドリズマブは寛解導入効果、寛解維持効果ともにプラセボ群と比較して有効性が確認された1)。同様の成績は他の試験でも確認されている2-5)

年齢による有効性
GEMINI試験のサブ解析やpost-hoc解析の結果も多数報告されており、年齢階層別解析では年齢によって有効性に差は認められなかった6)

抗TNF-α抗体製剤投与歴の有無と有効性
多くの報告はサブ解析であり、また投与症例数は抗TNF-α抗体製剤使用歴のある患者が多数である。現在までに両群の直接比較試験はない。GEMINI試験のpost-hoc解析では、直腸出血スコア<0, 便回数≦1を達成する患者の割合は投与2週目でプラセボ群に比しベドリズマブ群で高く、その傾向はTNFナイーブ患者でより強い傾向が認められた7)。総じてTNFナイーブ患者でより高い有効性を示したとするものが多い8-11)

安全性
日和見感染症リスク、非特異的α4インテグリン抗体ナタリズマブで報告された進行性多巣性白質脳症(Progressive Multifocal Leukoencepharopathy, PML)リスク、抗製剤抗体の出現率については治験でベドリズマブの投与を受けたIBD患者2800名以上、最大5年間(4811PY)の統合解析12)において、
・ PMLの発症はなかった。
・ ベドリズマブは重篤な日和見感染症のリスク上昇とは関連していなかった。
・ 悪性腫瘍の発生率は通常のIBD患者と変わりなかった。
・ GEMINI 1,2試験で52週までベドリズマブ投与を受けた1434人中56人(4%)で抗ベドリズマブ抗体陽性となり、うち33名は中和抗体であった。
と報告されている。PMLについては他の報告を含めて現在までにベドリズマブ投与と直接的な因果関係のあるPML発症は報告されていない(1例はHIV患者での発症例)。総じて、これまでの報告ではベドリズマブ特有な重篤な有害事象の報告は認められない(2018年12月現在)13-16)。術後合併症に関するベドリズマブのリスクに関する報告は少なく、術後合併症はベドリズマブ投与群のほうが抗TNF-α抗体製剤投与群より低いとする報告17)、術後合併症の増加に影響しないという報告18)がある一方、ベドリズマブ投与が術後創部感染症のリスクとして抽出されたという報告19)もあり結論を導くにはいたっていない。妊婦や小児における投与報告はまだ少なく今後のデータ集積が必要である20-22)

<参考文献>
1. Feagan BG, et al. N Engl J Med. 2013 22 ; 369(8): 699-710.
2. Vivio EE, et al. J Crohns Colitis 2016 ; 10(4): 402-409.
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6. Yajnik V, et al. Adv Ther. 2017 ; 34(2): 542-559.
7. Feagan BG, et al. Clin Gastroenterol Hepatol. 2019 ; 17(1): 130-138.
8. Shelton E, et al. Inflamm Bowel Dis. 2015 ; 21(12): 2879-2885.
9. Baumgart DC, et al. Aliment Pharmacol Ther. 2016 ; 43(10): 1090-1102.
10. Stallmach A, et al. Aliment Pharmacol Ther. 2016 ; 44(11-12): 1199-1212.
11. Feagan BG, et al. Inflamm Bowel Dis. 2018 25. doi : io.1093/ibd/izy323. [Epub ahead of print]
12. Colombel JF, et al. Gut. 2017 ; 66(5): 839-851.
13. Feagan BG, et al. J Crohns Colitis. 2018 30 ; 12(8): 905-919.
14. Loftus EV Jr, et al. J Crohns Colitis. 2017 1 ; 11(4): 400-411.
15. Wright AP, et al. Liver Transpl. 2017 ; 23(7): 968-971.
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17. Yung DE, et al. Inflamm Bowel Dis. 2018 12 ; 24(11): 2327-2338.
18. Law CCY, et al. J Crohns Colitis. 2018 27 ; 12(5): 538-545.
19. Lightner AL, et al. Inflamm Bowel Dis. 2018 19 ; 24(4): 871-876.
20. Moens A, et al. J Crohns Colitis. 2019 1 ; 13(1): 12-18.
21. Mahadevan U, et al. Aliment Pharmacol Ther.2017 ; 45(7): 941-950.
22. Schneider AM, et al. BMC Gastroenterol. 2018 15 ; 18(1): 140

治療原則

重症度や罹患範囲・QOL(生活の質)の状態などを考慮して治療を行う。活動期には寛解導入治療を行い、寛解導入後は寛解維持治療を長期にわたり継続する。なお、寛解の判定は臨床症状や内視鏡を用いるが生検結果は参考にとどめる。

重症例や全身障害を伴う中等症例に対しては、入院のうえ、脱水、電解質異常(特に低カリウム血症)、貧血、低蛋白血症、栄養障害などに対する対策が必要である。また、内科治療への反応性や薬物による副作用あるいは合併症などに注意し、必要に応じて専門家の意見を聞き、外科治療のタイミングなどを誤らないようにする。

劇症型は急速に悪化し生命予後に影響する危険があるため、内科と外科の協力のもとに強力な治療を行い、短期間の間に手術の要、不要を決定する。

小児例では、短期間に全大腸炎型に進展しやすい、重症化しやすいなどの特徴があり、成長障害にも配慮した治療が必要である。薬用量等については、小児治療指針を参照のこと。

特に高齢者や免疫力の低下が疑われる患者では、強く免疫を抑制する治療に伴う副作用(ニューモシスチス肺炎などの日和見感染など)により致死的となることがあるため、ST合剤の予防投与などを積極的に考慮し、治療効果判定など早期に行い必要に応じて他の治療法や外科治療を選択する必要がある。

中等症以上の症例では、ステロイド治療が必要となることが多い。ステロイド剤は重症度や治療歴などをもとに適正な用量で治療を開始し、漫然とした長期投与や減量中止後短期間における繰り返し投与は副作用や合併症につながることがあるので注意が必要である。通常、ステロイド使用時の初期効果判定は1~2週間以内に行い、効果不十分な場合は他の治療法の追加や切り替えを検討する。

腸管外合併症(壊疽性膿皮症など)の難治例も手術適応となることがあるので専門家に相談することが望ましい。

また、ステロイド抵抗例などの難治例や重症例では、血球成分除去療法やシクロスポリン点滴静注・タクロリムスの経口投与・インフリキシマブの点滴静注・アダリムマブの皮下注射・ゴリムマブの皮下注射などの選択肢があるが、必要に応じて専門家の意見を聞くことが望ましい。特に強い免疫抑制を伴う治療の重複使用においては、感染症などのリスクを考慮し慎重に行う。

B型肝炎ウイルス感染者(キャリアおよび既往感染者)に対し各種の免疫を抑制する治療を行う場合、HBVの再活性化によるB型肝炎を発症する可能性が考慮される。このため免疫を抑制する薬剤の使用に際しては、日本肝臓学会編B型肝炎治療ガイドライン(第3版)に基づいたB型肝炎ウイルスのスクリーニングが必要であり、ウイルス保有患者については同ガイドラインに準じた医療的対応が必要である。

  • 免疫を抑制する治療としては、副腎皮質ステロイド(中等量以上)、アザチオプリン、6-MP、シクロスポリン、タクロリムス、抗TNF-α抗体製剤(インフリキシマブ・アダリムマブ・ゴリムマブ)、トファシチニブ、ベドリズマブが該当する。

抗TNF-α抗体製剤治療では結核併発のリスクが報告されており、本剤の投与に際しては十分な問診および胸部X線検査に加え、インターフェロンγ遊離試験(QFT、T-SPOT)またはツベルクリン反応検査を行い、疑わしい場合には積極的に胸部CT検査も併用するとともに呼吸器内科医など専門家にコンサルテーションする必要がある。これらスクリーニング検査で陽性所見が一つでもあれば潜在性結核感染を疑い本剤開始3週間前からINH(原則300mg/日)を6~9ヶ月間投与する。ツベルクリン反応等の検査陰性例や、抗結核薬による予防投与例からも導入後に活動性結核が認められた報告が有り、本剤治療期間中には肺および肺外結核の発現に留意し、経過観察を行う。 ヤヌスキナーゼ阻害剤であるトファシチニブは間接的にTNF-αの作用を阻害する可能性があり、接着因子に対する抗体製剤であるベドリズマブも感染症に対する免疫に影響を与える可能性が否定できないため、投与に先立っては同様の結核スクリーニングを行う必要がある。

患者が悪性疾患を併発した場合、原則としてチオプリン製剤・カルシニューリン阻害剤・抗TNFα抗体製剤は、悪性疾患の治療終了までは中止を検討する。またこれらの薬剤を悪性疾患の治療後あるいは既往歴を有する患者に使用する場合には、その薬剤の必要性と悪性疾患再発への影響を十分に検討し適応を判断する。

手術法など外科治療の詳細については、外科治療指針を参照のこと。

薬物療法

薬物療法は、主として重症度と罹患範囲に応じて薬剤を選択する。寛解導入後も、再燃を予防するため寛解維持療法を行う。

治療継続中に急性増悪を起こした場合や寛解維持療法中に再燃を起こした場合には、前回の活動期と同一の治療法が奏効しないことや、より重症化することが多いので、これらの点を参考にして治療法を選択する。重症例、難治例は専門家に相談するのが望ましい。

寛解導入療法

1.直腸炎型

5-ASA(5-アミノサリチル酸)製剤の経口剤(ペンタサ®顆粒/錠・サラゾピリン®錠・アサコール®錠・リアルダ®錠)または坐剤(ペンタサ®坐剤・サラゾピリン®坐剤)あるいは注腸剤(ペンタサ®注腸)による治療を行う。これで改善がなければ、製剤(経口剤、坐剤、注腸剤)の変更や追加、あるいは成分の異なる局所製剤への変更または追加を行う。

局所製剤
5-ASA製剤では、坐剤としてはサラゾピリン®坐剤1日1~2gやペンタサ®坐剤1日1g〈注1〉、あるいは注腸剤としてはペンタサ®注腸1日1.0gを使用する。
ステロイドを含む製剤ではリンデロン®坐剤1日1~2mgまたはステロイド注腸[プレドネマ®注腸1日20~40mg、ステロネマ®注腸1日3~6mg、レクタブル®注腸フォーム1 回1プッシュ(ブデソニドとして2mg)1日2回〈注2〉]を使用する。

経口剤
ペンタサ®顆粒/錠1日1.5~4.0g〈注3〉、サラゾピリン®錠1日3~4g〈注4〉、アサコール®錠1日2.4~3.6g、リアルダ®錠1日2.4〜4.8gいずれかを使用する〈注3〉。

上記の治療法が奏効した場合にはリンデロン®坐剤、ステロイド注腸、ブデソニド注腸フォーム剤は可能なら漸減中止し、寛解維持療法に移行する。

  • ステロイドを含む製剤は、長期投与で副作用の可能性があるので、症状が改善すれば漸減中止が望ましい。
  • 以上の治療を最大限行ったにもかかわらず、寛解導入に至らない場合には、左側大腸炎・全大腸炎の中等症に準じるが、副腎皮質ステロイド剤の全身投与(特に大量投与)は安易に行うべきではない。また、軽度の症状が残る場合、追加治療のメリットとデメリットを考慮し、経過観察するという選択肢もある。
  • 小児では短期間に全大腸炎型に進展しやすい。
2.左側大腸炎型・全大腸炎型

A.軽症
ペンタサ®顆粒/錠1日1.5~4.0g〈注3〉、サラゾピリン®錠1日3~4g〈注4〉、アサコール®錠1日2.4~3.6g 、リアルダ®錠1日2.4 〜4.8g〈注3〉いずれかを経口投与する。ペンタサ®注腸を併用すると効果の増強が期待できる〈注5〉。左側大腸の炎症が強い場合はステロイド注腸やブデソニド注腸フォーム剤の併用が有効な場合がある。
2週間以内に明らかな改善があれば引き続きこの治療を続け、可能ならステロイド注腸やブデソニド注腸フォーム剤は漸減中止する。寛解導入後は後述の寛解維持療法を行う。
改善がなければ以上に加えて中等症の(1)【プレドニゾロン経口投与】の治療を行う。
※ 左側大腸炎型は罹患範囲が脾彎曲を超えないものと定義されている。

B.中等症

    基本的には軽症に準じてよいが

  • 炎症反応や症状が強い場合は、軽症の治療に加えてプレドニゾロン1日30 ~ 40mgの経口投与を初期より行ってもよい。また軽症に準じた治療で2週間以内に明らかな効果がない場合や途中で増悪する場合もプレドニゾロン1日30~40mgの経口投与を併用する。
    これで明らかな効果が得られたら、20mgまで漸次減量し、以後は2週間毎に5mg程度ずつ減量する。ステロイド注腸やブデソニド注腸フォーム剤はプレドニゾロンの経口投与を中止するまで続けても良い。その後は軽症に準じて治療継続を原則とする。
  • プレドニゾロンの減量に伴って増悪または再燃が起こり離脱も困難な場合(ステロイド依存例)は、難治例の(2)の【ステロイド依存例】の治療を行う。
  • プレドニゾロンの経口投与を行っても、1~2週間以内に明らかな効果が認められない時は、原則として入院させ重症の(1)、(2)または難治例の(1)の【ステロイド抵抗例】の治療を行う。

C.重症

  • 入院のうえ全身状態の改善に対する治療を行う。常に外科治療の適応に注意し、必要に応じて外科医等と連携して治療に当たる。
  • 薬物療法としては、当初よりプレドニゾロン1日40~80mg(成人においては1~1.5mg/kgを目安とし、最大で1日80mg程度とする。)の点滴静注を追加する(ステロイド大量静注療法)。さらに症状や状態に応じてペンタサ®顆粒/錠1日1.5~4.0gまたはサラゾピリン®錠1日3~4gの経口投与やアサコール錠®1日2.4~3.6g、リアルダ®錠1日2.4~4.8g、及び注腸剤を併用しても良い。
     これで明らかな効果が得られたら、プレドニゾロンを漸次減量し40mgで寛解導入を期し、その後は2週間毎を目安とし30mg、20mgと病態に応じて減量し、以後は中等症の(1)【プレドニゾロン経口投与】、(2)【ステロイド依存例】に準じた治療を行う。必要と思われる症例には、当初より難治例の(1)の【ステロイド抵抗例】の治療を行ってもよい。
  • 前項の治療を行っても1 ~ 2週間程度で明らかな改善が得られない場合(ステロイド抵抗例)は、難治例の(1)に従い血球成分除去療法〈注6〉・シクロスポリン(サンディミュン®)持続静注療法〈注7〉・タクロリムス(プログラフ®)経口投与〈注8〉・インフリキシマブ(レミケード®)点滴静注〈注9〉・アダリムマブ(ヒュミラ®)皮下注射〈注10〉・ゴリムマブ(シンポニー®)皮下注射〈注11〉、トファシチニブ(ゼルヤンツ®)経口投与〈注12〉、ベドリズマブ(エンタイビオ®)点滴静注〈注13〉のいずれかの治療法を行う。
    なお、これらの選択肢のうち一つの治療法で効果が不十分な場合に安易に次々と別の治療法を試すことは慎重であるべきで、外科治療の考慮も重要である。
  • 以上の治療でも明らかな改善が得られない、または改善が期待できない時は、すみやかに手術を考慮する。

D.劇症型 (急性劇症型または再燃劇症型)
劇症型は、急速に悪化し生命予後に影響する危険があるため、外科医との密接な協力のもと、緊急手術の適応を考慮しつつ、次のように取り扱う。

  • ステロイド大量静注療法を行う<注12>。この際、経口摂取を禁じ、経静脈的栄養補給を行う。大量静注療法の効果判定は、外科医等と連携の上、手術時機を失することの無いよう早期に行う。
  • 以上の治療で激烈な症状のほとんどが消失した場合は、この時点から重症型のステロイド大量静注療法に準ずる。
  • (1)の治療を行っても症状が悪化する場合、あるいは早期に症状の明らかな改善が得られない場合は、シクロスポリン持続静注療法<注7>、タクロリムスの経口投与<注8>、インフリキシマブ点滴静注投与〈注9〉を試みてもよいが、改善の無い例または改善が期待できない例では時期を失することなく緊急手術を行う。

※重症例、特に劇症型では中毒性巨大結腸症や穿孔を起こしやすいので、腹部所見(膨隆、腸雑音など)に留意し、適宜腹部単純X線撮影などによる観察を行う。

E.難治例
適正なステロイド使用にもかかわらず、効果が不十分な場合(ステロイド抵抗例)と、ステロイド投与中は安定しているがステロイドの減量に伴い再燃増悪するステロイド依存例等よりなる。難治例の治療に当たっては、これまで投与した薬物による副作用、病態や治療による患者QOLの状態などによる手術適応を考慮し、それぞれのメリット・デメリットなどを患者と相談の上で治療法を選択する。

  • ステロイド抵抗例
    ステロイドによる適正な治療にもかかわらず、1 ~2週間以内に明らかな改善が得られない場合である。
    重症度が中等症以上では血球成分除去療法〈注6〉、シクロスポリンの持続静注〈注7〉、タクロリムスの経口投与〈注8〉、インフリキシマブの点滴静注〈注9〉、アダリムマブの皮下注射〈注10〉、ゴリムマブ皮下注射〈注11〉、トファシチニブ経口投与〈注12〉、ベドリズマブ点滴静注〈注13〉が選択可能である。
    中等~重症例では白血球除去療法、抗TNF-α抗体製剤、タクロリムス経口投与、トファシチニブ経口投与、ベドリズマブ点滴静注が適応となる。重症例で経口摂取が不可能な劇症に近い症例ではインフリキシマブ点滴静注またはシクロスポリン持続静注の選択が考慮される。白血球除去療法やシクロスポリンで寛解導入された場合は寛解維持療法の項に示すようにアザチオプリンや6-MPによる寛解維持療法〈注15〉に移行する。なお、インフリキシマブの点滴静注で寛解に導入された場合は8週毎の投与、アダリムマブの皮下注射で寛解に導入された場合は2週毎の投与、ゴリムマブの皮下注射で寛解に導入された場合は4週毎の投与による寛解維持療法が選択可能である。
    ステロイド抵抗例のなかに、クロストリジウムデフィシル感染やサイトメガロウイルス感染の合併による増悪例が存在する。サイトメガロウイルス腸炎の合併症例に対しては抗ウイルス剤の併用が有効な場合がある。

    ※サイトメガロウイルス感染合併例の典型的内視鏡所見として円形の打ち抜き潰瘍を形成するが、非典型的所見を呈する場合もある。診断には末梢血による再活性化の診断(アンチゲネミア:C7-HRP等によるウイルス感染細胞数の測定)、生検病理所見による核内封入体の証明や免疫染色によるウイルス抗原の同定、あるいは生検検体を用いたPCRによるウイルスの検出が行われるが判断基準は議論がある。

  • ステロイド依存例
    プレドニゾロンの減量に伴って増悪または再燃が起こり離脱も困難な場合である。通常、免疫調節薬であるアザチオプリン(イムラン®・アザニン®など)50 ~100mg/日または6-MP(ロイケリン®)30~50mg/日を併用する〈注13〉。これらの効果発現は比較的緩徐で、1~3ヶ月を要することがある。
    これが有効で副作用がない時は、上記の免疫調節薬を開始して1 ~ 2 ヶ月後に経口プレドニゾロンを徐々に減量、中止する。寛解導入後は副作用に注意し適宜採血などを行いながら寛解維持療法としての投与を続ける。
    上記で効果不十分あるいは免疫調節薬不耐例で活動期には、血球成分除去療法〈注6〉やタクロリムス経口投与〈注8〉やインフリキシマブの点滴静注〈注9〉やアダリムマブ皮下注射〈注10〉・ゴリムマブ皮下注射〈注11〉トファシチニブ経口投与〈注12〉、ベドリズマブ点滴静注〈注13〉も考慮する。なおトファシチニブ経口投与を選択した場合は原則としてチオプリン製剤の併用は禁忌である。
  • これらの治療で効果が不十分、あるいはQOL(生活の質)の低下した例では手術を考慮する。
  • 小児では成長障害がみられる例においても手術を考慮する。

F.中毒性巨大結腸症
重篤な症状を伴って、結腸、特に横行結腸の著明な拡張を起こした状態である。直ちに緊急手術を行うか、外科医の協力のもとに短期間劇症の強力な治療を行い、所見の著明な改善が得られない場合は緊急手術を行う (外科療法の項参照)。
※仰臥位腹部単純X線撮影で、横行結腸中央部の直径が6cm以上の場合は本症が考えられる。

寛解維持療法

以下の 5-ASA 製剤の経口剤投与または局所治療の単独または併用を行う。直腸炎型の寛解維持では局所治療の単独あるいは併用も有用である。

経口剤
ペンタサ®顆粒/錠1日1.5~2.25g〈注16〉、サラゾピリン®錠1日2g、アサコール®錠1日2.4g〈注17〉、リアルダ®錠1日2.4gいずれかを投与する。

局所治療
ペンタサ®注腸1日1.0g〈注16〉またはサラゾピリン®坐剤1日0.5~1gやペンタサ®坐剤1日1g〈注1〉を使用する。

なお、ステロイド抵抗例や依存例などの難治例では原則として免疫調節薬による寛解維持治療を行う。また、インフリキシマブで寛解導入を行った例では8 週ごとのインフリキシマブ投与、アダリムマブで寛解導入を行った例では2週ごとのアダリムマブ投与、ゴリムマブで寛解導入を行った例では4週ごとのゴリムマブ投与による寛解維持療法を行っても良い。
※ ステロイドには長期の寛解維持効果が乏しいことが知られている。

  • ペンタサ®坐剤は病型によらず直腸部の炎症性病変に対し有用である。
  • レクタブル®注腸フォームの腸内で到達する範囲は概ねS状結腸までであり、直腸及びS状結腸に活動性の病変を有する軽症から中等症例に対し使用する。
  • 寛解導入療法としてペンタサ®顆粒/錠は国内外の報告より、高用量の効果が高いことから、1日4.0g投与が望ましい。また、アサコール錠®では1日3.6g、リアルダ®錠では1日4.8gが望ましい。小児でも高用量の効果が高いことが知られている。
  • サラゾピリン®錠の⽤量については、症状により初回毎⽇16錠(8g)を3週間程度は⽤いても差し⽀えない。サラゾピリン®錠は発疹のほか溶血や無顆粒球症、肝機能障害なども起こり得るので、定期的に血液検査や肝機能検査を行う。また、男性の場合には精子の抑制作用も報告されている。
  • ペンタサ®顆粒/錠経口投与とペンタサ®注腸を併用する場合には、経口4.0gと注腸1.0gの併用が望ましい。
  • 血球成分除去療法
    アダカラム®を用いて顆粒球・単球を吸着除去する顆粒球除去療法(GMA)とセルソーバ®を用いて顆粒球・単球・リンパ球を除去する白血球除去療法(LCAP)がある。
    原則1クール計10回とし、劇症では計11回まで保険適応である。通常週1回行うが、症状の強い症例などでは週2回行ったほうが効果が高い。治療中に増悪する症例や無効と判断した症例は、手術や他の治療法へ変更する。重症例に行う場合には、比較的早い時期から併用すべきであり、有効性の判定も早期(2週間程度)に行うべきである。なお、本治療は専門施設で行うのが望ましい。
  • シクロスポリン持続静注療法(*)
    シクロスポリン1日量2~4mg/kgを24時間持続静注投与で開始し、血中濃度を頻回に測定しながら、200~400ng/mL程度を目安として維持するよう投与量を調節する。
    改善が見られないときや病状が増悪したり、重篤な副作用(感染症、腎不全)が出現したりする際は、手術や他の治療法へ変更する。
    投与後1週間以内に明らかな改善効果を認めた場合は、最大14日間まで静注を継続する。静注中止後は、原則としてアザチオプリンあるいは6-MP(*)の経口投与を直ちに開始し寛解維持療法に移行する。
    本治療は、血中濃度の厳密な管理が必要であること、重篤な感染症や腎不全の副作用がありうることから、専門施設で行うのが望ましい。
  • タクロリムス経口投与
    タクロリムスを用いる際は当初は高トラフを目指す(10~15ng/mL)がその後は低トラフ(5~10ng/mL)にする。寛解導入後は、アザチオプリンや6-MP(*)による寛解維持療法に移行する。腎障害・手指振戦などの副作用に注意する。3ヶ月を越える長期投与では、腎機能障害の危険が増加し、時に不可逆性となる場合もあるため慎重な経過観察が必要である。なお、本治療は血中濃度が迅速に測定可能な環境の施設で行うのが望ましい。
  • インフリキシマブ点滴静注
    インフリキシマブは初回投与後さらに第2週、第6週に投与し、有効な場合は維持療法として以後8週間の間隔で投与が可能である。事前に感染症のチェック等を十分行い、投与時反応に対する処置が可能な状態で5mg/kgを2時間以上かけて点滴静注する。なお、投与時反応が無ければ3回目以後は、点滴速度を最大で1時間あたり5mg/kgまで短縮することができるが、副作用の発現に注意する。
    投与時反応とは、投与中あるいは投与終了後2時間以内に出現する症状で、アナフィラキシー様の重篤な時は投与を中止し、全身管理を行う。インフリキシマブの副作用として、免疫抑制作用による結核菌感染の顕性化、敗血症や肺炎などの感染症、肝障害、発疹、白血球減少などが報告されている。
    なお、本治療は専門施設で行うのが望ましい。
  • アダリムマブは初回160mgの皮下注射を行い、2週間後に80mgの皮下注射を行う。その後は40mgの皮下注射を2週間ごとに寛解維持療法として行う。条件が満たされれば、患者自身による自己注射も可能である。
  • ゴリムマブは初回200mgの皮下注射を行い、2週間後に100mgの皮下注射を行う。その後は100mgの皮下注射を4週間ごとに寛解維持療法として行う。(患者自身による自己注射は、認められていない。)
  • トファシチニブとして1回10mgを1日2回8週間経口投与する。なお、効果不十分な場合はさらに8週間投与することができる。維持療法では、通常、成人にトファシチニブとして1回5mgを1日2回経口投与する。なお、維持療法中に効果が減弱した患者では、1回10mgの1日2回投与に増量することができる。また、過去の薬物治療において難治性の患者(TNF阻害剤無効例等)では、1回10mgを1日2回投与することができる。なおトファシチニブ投与時にはチオプリン製剤の併用は原則禁忌である。
  • ベドリズマブは1回300mgを点滴静注する。初回投与後2週、6週に投与し、以降8週間隔で点滴静注する。3回投与しても治療反応が得られない場合は治療法を再考する。
  • ステロイド大量静注療法
    1. 全身状態の管理。
    2. 水溶性プレドニゾロン40~80mg(成人では1~1.5mg/kgを目安とし、最大で1日80mg程度とする)。小児では水溶性プレドニゾロン1日1.0~2.0mg/kgを目安とし、最大で1日60~ 80mg程度とする。
    3. 小児ではメチルプレドニゾロンのパルス療法が選択されることもある。
    4. ステロイド大量静注療法の効果判定は、手術時機を失することの無いように速やかに行う。
  • アザチオプリンや6-MP(*)の副作用として、白血球減少、胃腸症状、膵炎、肝機能障害、脱毛などが起こり得る。通常アザチオプリンでは50mg/日程度、6-MP(*)では30mg/日程度より開始し、副作用や効果をみながら適宜増減する。
    上記のような副作用は投与開始後早期に起こることがあるため、投与開始早期は頻回に血液検査を行い(投与開始後1~2週間を目安にし、その後は数週間おき)、白血球数減少やその他の異常が発現した場合程度に応じて減量、または一時中止する。
    チオプリン製剤(アザチオプリン・6-MP*)の副作用の中で、服用開始後早期に発現する重度の急性白血球減少と全脱毛がNUDT15遺伝子多型と関連することが明らかとされている。平成31年2月よりNUDT15遺伝子多型検査が保険承認となっており、初めてチオプリン製剤の投与を考慮する患者に対しては、チオプリン製剤による治療を開始する前に本検査を施行し、NUDT15遺伝子型を確認の上でチオプリン製剤の適応を判断することが推奨される。現在は保険承認後の移行期であるため各施設において検査体制の整備が必要である。日本人の約1%に存在するCys/Cys型の場合は、重篤な副作用(高度白血球減少、全脱毛)のリスクが非常に高いためチオプリン製剤の使用を原則として回避し、Arg/Cys, Cys/His型の場合は低用量(通常量の半分程度を目安とする)からの開始を考慮する。これらの副作用のリスクが低いArg/Arg, Arg/His型の場合であっても、チオプリン製剤の副作用のすべてがNUDT15遺伝子多型に起因するものでないため、使用に際しては定期的な副作用モニタリングを実施する。
    NUDT15遺伝子検査結果 日本人での頻度 通常量で開始した場合の副作用頻度 チオプリン製剤の開始方法
    急性高度白血球減少 全脱毛
    Arg/Arg 81.1% 稀(<0.1%) 稀(<0.1%) 通常量で開始
    Arg/His
    Arg/Cys 17.8% 低(<5%) 低(<5%) 減量して開始
    Cys/His <0.05% 高(>50%)
    Cys/Cys 1.1% 必発 必発 服用を回避
  • ペンタサ®顆粒/錠1日1.5~2.25gによる寛解維持の場合、コンプライアンスを改善するために1日1回投与が望ましい。2g1日1回投与は1g1日2回投与よりも有用という海外のエビデンスがある。また、ペンタサ®顆粒/錠とペンタサ®注腸1日1.0gの2 ~ 3日に1回の間欠投与や週末2日間の併用投与も有用である。
  • 寛解期には、必要に応じて1日1回2.4g食後経口投与とすることができる
  • (*)現在保険適応には含まれていない。

平成30年度潰瘍性大腸炎治療指針(内科)

寛解導入療法
軽症 中等症 重症 劇症









経口剤:5-ASA製剤
注腸剤:5-ASA注腸、ステロイド注腸
フォーム剤:ブデソニド注腸フォーム剤

※中等症で炎症反応が強い場合や上記で改善ない場合はプレドニゾロン経口投与
※さらに改善なければ重症またステロイド抵抗例への治療を行う
※直腸部に炎症を有する場合はペンタサ坐剤が有用

・プレドニゾロン点滴静注

※状態に応じ以下の薬剤を併用
経口剤:5-ASA製剤
注腸剤:5-ASA注腸、ステロイド注腸

※改善なければ劇症またはステロイド抵抗例の治療を行う
※状態により手術適応の検討

・緊急手術の適応を検討

※外科医と連携のもと、状況が許せば以下の治療を試みてもよい。
・ステロイド大量静注療法
・タクロリムス経口
・シクロスポリン持続静注療法*
・インフリキシマブ点滴静注

※上記で改善なければ手術



経口剤:5-ASA製剤
坐剤:5-ASA坐剤、ステロイド坐剤
注腸剤:5-ASA注腸、ステロイド注腸
フォーム剤:ブデソニド注腸フォーム剤  ※安易なステロイド全身投与は避ける



ステロイド依存例 ステロイド抵抗例

免疫調節薬:・アザチオプリン・6-MP*
※(上記で改善しない場合):血球成分除去療法・タクロリムス経口・インフリキシマブ点滴静注・アダリムマブ皮下注射・ゴリムマブ皮下注射・トファシチニブ経口・ベドリズマブ点滴静注を考慮してもよい
※トファシチニブ経口はチオプリン製剤との併用は禁忌

中等症: 血球成分除去療法・タクロリムス経口・インフリキシマブ点滴静注・アダリムマブ皮下注射・ゴリムマブ皮下注射・トファシチニブ経口・ベドリズマブ点滴静注
重 症: 血球成分除去療法・タクロリムス経口・インフリキシマブ点滴静注・アダリムマブ皮下注射・ゴリムマブ皮下注射・シクロスポリン持続静注療法
※アザチオプリン・6-MP*の併用を考慮する(トファシチニブ以外)
※改善がなければ手術を考慮

寛解維持療法
非難治例 難治例

5-ASA製剤(経口剤・注腸剤・坐剤)

5-ASA製剤(経口剤・注腸剤・坐剤)
免疫調節薬(アザチオプリン、6-MP)、インフリキシマブ点滴静注、アダリムマブ皮下注射・ゴリムマブ皮下注射、トファシチニブ経口、ベドリズマブ点滴静注

:現在保険適応には含まれていない、:それぞれ同じ薬剤で寛解導入した場合に維持療法として継続投与する
5-ASA経口剤(ペンタサ®顆粒/錠、アサコール®錠、サラゾピリン®錠、リアルダ®錠)、5-ASA注腸剤(ペンタサ®注腸)、5-ASA坐剤(ペンタサ®坐剤、サラゾピリン®坐剤)
ステロイド注腸剤(プレドネマ®注腸、ステロネマ®注腸)、ブデソニド注腸フォーム剤(レクタブル®注腸フォーム)、ステロイド坐剤(リンデロン®坐剤)

※(治療原則)内科治療への反応性や薬物による副作用あるいは合併症などに注意し、必要に応じて専門家の意見を聞き、外科治療のタイミングなどを誤らないようにする。薬用量や治療の使い分け、小児や外科治療など詳細は本文を参照のこと。

潰瘍性大腸炎 フローチャート

潰瘍性大腸炎 フローチャート

潰瘍性大腸炎 難治例の治療

潰瘍性大腸炎 難治例の治療

出典:潰瘍性大腸炎治療指針(0.86Mb), 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業 「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」(鈴木班) 平成30年度分担研究報告書 潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針. p5-16, 2019年3月