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GMA20周年特設ページ:GMA治療の歩みと可能性

Adacolumn 20th Aniversary

アダカラムインタビュー記事シリーズ

GMA 20年の臨床知見からの提言

全国のIBD専門の先生方から、最新のIBDにおける治療環境を踏まえた上で、様々な角度からGMAの日常診療における活用方法や工夫、メリットや課題をお話しいただきます。

岡山県アダカラム
インタビュー記事シリーズVol. 5

IBD治療における多職種連携の意義とGMAに求められる役割

医療法人天馬会 チクバ外科・胃腸科・肛門科病院
副院長・IBDセンター長
垂水 研一 先生

IBDに対しては、多職種によるチーム医療が治療成績やQOLの向上に寄与すると考えられています。そこで、多職種連携を推進する上でのポイントについてお話を伺い、さらに近年注目を集めているIBD診療において注意すべき感染症についても解説いただきました。

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チクバ外科・胃腸科・肛門科病院におけるIBD診療の実際

 チクバ外科・胃腸科・肛門科病院は、大腸肛門領域を中心とした消化器専門病院として、消化管内視鏡診療を年間で上部約6,000件、下部約8,000件実施し、さらに肛門機能検査や排便機能検査など充実した診療体制を構築している。炎症性腸疾患(IBD)に関しては、岡山県内のみならず中四国・近畿地方からの患者も受け入れ、IBD診療の基幹施設としての役割を担っており、潰瘍性大腸炎(UC)約400例、クローン病(CD)約150例の診療を行っている。

 これら県内外のIBD患者を数多く診療している背景について、垂水先生は『岡山県は、セミナーなどの啓発活動によりIBDの病診連携が進んでおり、プライマリケアにてIBDが疑われた場合、速やかに当院を含む専門施設への紹介が行われています。特にCDでは、当院の肛門外科治療の実績を基に紹介されることが多くなっています。なお、IBD治療においては、外科と内科の連携が重要であり、円滑な意思疎通による速やかな診療の実施を図っています。』と述べられた。


IBDに対する多職種連携の実際とその意義

 現在のIBD診療においては、治療成績やQOL向上のために、他科領域との連携に加え、多職種連携の推進も強く求められている。チクバ外科・胃腸科・肛門科病院では、2012年4月よりIBDチームを設立し、医師・薬剤師・看護師・管理栄養士・調理師・臨床工学技士・ソーシャルワーカー・事務職員が共同で職務に臨んでいる。

 このチームの役割について、垂水先生は『IBDの日常診療における密な連携に加え、月に1~2回のカンファレンスによって、診療における課題の抽出や疾患理解に取り組んでいます。また、年間約3回の患者向け院内講演会や料理講習会を開催しており、年々受講者数が増加しています。他にも、管理栄養士と調理師が成分栄養剤の飲み方について工夫を凝らしたメニューの人気ランキングをコラボレターで配信するなど、IBD患者が受け入れやすい栄養療法を推進しています。
 一方、IBD患者のQOLに大きな影響を及ぼすストーマケアについて、皮膚排泄ケア認定看護師(WOCN)のもと、外来および看護師全体で取り組むと共に、そこで得られた知見を積極的に報告しています1,2)

 また、IBDは指定難病であり、ソーシャルワーカーによる各種申請や手続きのサポートは、IBD患者が安心して治療を受ける上で重要な役割を担っています。そして、臨床工学技士や看護師の協力によって、当院では土曜日(午前・午後)にも顆粒球単球吸着療法(GMA)を実施しており、他施設からGMA治療患者を受け入れることもあります。このようなチーム医療の確立は、様々な情報を集約させ、医師が病態を捉えることに寄与するため、さらなる治療成績の向上が期待できます。』と多職種連携について総括された。


IBD診療において注意すべき感染症とGMAの意義

 IBD診療において、腸管感染症は症状がIBDと重なる部分が多いだけに、十分な注意が必要となる。例えば、CDに類似した内視鏡所見を呈するエルシニア腸炎3)などの腸管感染症に対して免疫抑制療法を行うと、感染症の悪化リスクが上昇する。また、ステロイド治療中のIBDではサイトメガロウイルス(CMV)の再活性化による腸炎を合併することがある4)。このようにIBD診療に影響を与える腸管感染症の原因微生物は、細菌からウイルスまで幅広く、いずれも鑑別診断が重要となる【 上段】。

 これらの点について、垂水先生は『IBDにおける腸管感染症の合併は、さらなる病態の悪化を招くため、感染を疑う際は微生物学的な検査の実施が必要です。この際、クロストリジオイデス ディフィシル(C. difficile)に関しては、その毒素であるC. difficileトキシンの迅速検査が可能ですが、一般的には細菌の糞便培養やCMV抗原検査では結果判定に数日〜10日程度の時間を要することとなります。この期間を補うIBD治療としては、安易なステロイドの全身投与は避けたいところで、感染症への影響が比較的小さいとされるGMAは、選択肢の一つとして重要と考えます【 下段】。

 すなわち、感染症が否定できないUC患者に対しては、培養検査などを行うと同時にGMA治療を開始します。そしてGMAを2〜3回実施した時点で、感染症検査の結果を考慮しながら、抗微生物薬投与の要否とGMAの継続を判断します。ここで、GMA治療に反応した場合は治療を継続しますが、反応性に乏しい場合は薬剤の追加などを考慮します。なお、GMAは容易に治療を中止することが可能である点も、感染症が危惧されるIBDの初期治療にGMAが適する一因と考えます。

 この他にも、GMAは抗菌薬投与中のC. difficile による偽膜性大腸炎の疑い例や、感染リスク軽減のためにステロイドの減量や離脱を図りたい場合、さらに易感染性かつ感染症に脆弱な高齢者に対して、重要な選択肢になるのではないかと推察します。高齢者や脱水を伴う患者に対しては、ブラッドアクセスの点からGMA施行前の水分補給や補液の実施が望まれます。

 近年、生物学的製剤など新薬の使用にあたっては、結核や帯状疱疹をはじめとした多様な感染症への注意が求められています。このような状況下、GMAへの期待は高まっており、改めてGMAとIBDにおける感染症に着目した知見の集積が望まれています。』とまとめられた。

チクバ外科_図表案.jpg

1) 福島 怜子 ほか:日本ストーマ・排泄リハビリテーション学会誌, 31(2), 44, 2015
2) 川上 隆子 ほか:日本ストーマ・排泄リハビリテーション学会誌, 31(3), 112-113, 2015
3) 垂水 研一 ほか:IBD Research, 8(4), 299-303, 2014
4) 垂水 研一 ほか:臨牀消化器内科, 26(7), 995-1002, 2011