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診断と治療:小児潰瘍性大腸炎の治療指針

2019年3月改訂

小児期潰瘍性大腸炎の治療原則

  • 治療方針は、臨床的評価(重症度、病変の拡がりなど)と小児用の活動性指標(pediatric ulcerative colitis activity index: PUCAI)に基づいて、フローチャートを参考に決定する。
  • 発症後、直腸炎型が全大腸炎型に進展しやすいなど、成人に比して病変の広範囲化、重症化が見られやすい。そのため小児では、急性期には成人よりも積極的な治療が望ましく、かつ輸液を含めた適切な全身管理を必要とする。中等症で炎症反応のある場合(PUCAI 50以上)は重症例と同じ扱いとし、重症例のうち全身状態不良の場合は、劇症に準じた扱いとする。
  • 重症例で十分量のステロイド薬投与でも効果不十分の場合は、早期に次の内科的治療(second line therapy)や外科治療を検討すべきである。難治例(ステロイド抵抗性、ステロイド依存性)の治療は経験豊富な施設で行うことが望ましく、外科治療の判断を誤らないようにする。
  • 身長・体重・二次性徴・骨年齢などの成長の指標を定期的に確認する必要がある。身長・体重の評価には成長曲線が有用である。成長障害の原因となるステロイド薬の使用は極力短期間とし、寛解維持の目的には使用しない。
  • 薬用量は原則として体重換算で決めるが、重症度に合わせて個々の薬剤の増量や減量を考慮する。
  • 寛解導入および維持に使用する薬物の一部は、小児に対する適応が承認されていない。したがってその使用にあたっては、本人・家族に効果と副作用について詳しく説明して、十分な同意を得ることが望ましい。
  • IBD患者においては、日本小児科学会が推奨するすべての予防接種を、免疫抑制療法を開始する前に実施しておくことが望まれる。特に、生ワクチン(BCG、麻しん・風しん(MR)ワクチン、水痘ワクチン、おたふくかぜワクチン、ロタウイルスワクチン)は、免疫抑制療法を開始する前に実施することが望ましい。すでに免疫抑制療法を開始している場合には、生ワクチンは、ワクチン株による感染症発現の可能性が否定できないため、原則として行わない。一方、不活化ワクチンは、効果が減弱する可能性はあるが接種可能であり、接種が勧められる。
  • 思春期に特徴的な心理社会的側面に対して、専門的カウンセリングを含めた心理的サポートを考慮する必要がある。さらに、成人診療科への移行(トランジション)を見据えて、移行プログラムを計画・実施していくことが望ましい。
  • 超早期発症型炎症性腸疾患(very early onset inflammatory bowel disease: VEO-IBD)、非典型的な内視鏡所見や経過を示す症例、標準的治療に抵抗性を示す症例、感染症を反復する症例、家族発症例などでは、単一遺伝子異常に伴う腸炎(monogenic IBD)の可能性があり、原発性免疫不全症候群の遺伝子解析を考慮する。

小児薬用量

(1)5-ASA製剤

寛解導入療法:50~100mg/kg/日
*低用量で効果不十分な例では高用量に増量する。
寛解維持療法:30~60mg/kg/日
*小児の寛解維持療法においては寛解導入療法で有効だった5-ASA製剤の投与量をそのまま継続するべきであるとされており、実際は添付文書に記載されている投与量より多くなることもある。
①メサラジン徐放剤(ペンタサ®顆粒/錠など)
寛解導入療法:最大量4.0g/日
寛解維持療法:最大量2.25g/日
②メサラジン錠(アサコール®錠)
寛解導入療法:最大量3.6g/日
寛解維持療法:最大量2.4g/日
③メサラジン・フィルムコーティング錠(リアルダ®錠)
寛解導入療法:最大量4.8g/日
寛解維持療法:最大量2.4g/日
④サラゾスルファピリジン(サラゾピリン®錠など)
寛解導入療法:40~70mg/kg/日、最大量4.0g/日
寛解維持療法:最大量2.0g/日
(②~④は小児への適応は承認されていない)

(2)局所製剤

①ペンタサ®注腸:20mg/kg/日(最大量1.0g/日)、1日1回
②ペンタサ®坐剤:20mg/kg/日(最大量1.0g/日)、1日1回
③サラゾピリン®坐剤:1~2個/日
④レクタブル®注腸フォーム:1回1プッシュ(ブデソニドとして2mg)1日2回
⑤プレドネマ®注腸:10~20kg:5~10㎎/日、20~40㎏:10~20mg/日、40kg以上:20mg/日
⑥ステロネマ®注腸:10~20kg:0.5~1.0㎎/日、20~40㎏:1~2mg/日、40kg以上:2mg/日
⑦リンデロン®坐剤:10~20kg:0.5㎎/日、20~40㎏:1mg/日、40kg以上:1~2mg/日
(①~④は小児への適応は承認されていない)

(3)経口・静注プレドニゾロン

軽症~中等症 0.5~1mg/kg/日、最大量40mg/日
中等症~重症 1~2mg/kg/日、最大量60~80mg/日
*プレドニゾロンの漸減はおよそ8~10週後に断薬できるように設定するが、病状により適宜設定する。
* 重症ではステロイドパルス療法が選択されることもある。メチルプレドニゾロン(30mg/kg/日、最大量1,000mg/日)を1日1回1~2時間かけて点滴静注することを3日連続で行い、続く4日間を休薬する。

(4)免疫調節薬

①アザチオプリン(イムラン®・アザニン®など):0.5mg/kg/日程度で開始し、副作用や効果をみながら通常、1~2.5mg/kg/日(最大1日100mg)まで増量する。
②6-MP(ロイケリン®):0.5~1.0mg/kg/日: 分1,アザチオプリンの概ね半量を目安とし、0.5~1.5mg/kg/日(最大1日50㎎)で用いる。(潰瘍性大腸炎に対する使用は承認されていない)
*海外ではチオプリン製剤投与(アザチオプリン・6-MP)に伴うリンパ増殖性疾患や悪性リンパ腫発症の相対リスクの増加が指摘されているが、絶対累積リスクは決して高くはない。EBウイルス感染症がリスクとなることから、未感染患者における使用では、特に注意深い経過観察が望まれる。小児潰瘍性大腸炎の寛解維持薬としての効果も確立されており、症例毎に期待される効果と安全性を考慮して使用する。
*チオプリン製剤の副作用の中で、服用開始後早期に発現する重度の急性白血球減少と全脱毛がNUDT15遺伝子多型と関連することが明らかとされており、平成31年2月よりNUDT15遺伝子多型検査が保険承認となった。検査の意義や位置づけは、成人の潰瘍性大腸炎治療指針の注15(12ページ)を参照する。

(5)免疫抑制薬

①タクロリムス(プログラフ®):0.05 ~ 0.3mg/kg/日(1日2回投与)を経口投与し、血中トラフ濃度10~15ng/mLを目標として調節する。寛解が得られた場合、投与開始2週目以降は血中トラフ濃度5~10ng/mLを目標とし投与量を調節する。(小児への適応は承認されていない)
②シクロスポリン(サンディミュン®)持続静注:2mg/kg/日の24時間持続静注で開始し、血中濃度を200~400ng/mL程度に維持するよう調節する。寛解が得られた場合、同血中濃度で最大14日間まで投与を継続する。(潰瘍性大腸炎に対する使用は承認されていない)

(6)生物学的製剤

①インフリキシマブ(レミケード®):用法、用量は成人と同様で、寛解導入療法では5mg/kgを0、2、6週で投与し、以後8週毎に同量を維持投与する。6歳以上の小児患者に対する適応が承認されている。
②アダリムマブ(ヒュミラ®):40kgを超える小児では初回160mgの皮下注射を行い、2週間後に80mgの皮下注射を行う。初回投与4週後以降は40mgの皮下注射を2週間ごとに寛解維持療法として行う。40kg以下の小児では初回92mg/m2(最大160mg) の皮下注射を行い、2週間後に46mg/m2(最大80mg)の皮下注射を行う。初回投与4週後以降は23mg/m2(最大40mg)の皮下注射を2週間ごとに寛解維持療法として行う。(小児への適応は承認されていない)
③ゴリムマブ(シンポニー®):45kg以上の小児では初回200mgの皮下注を行い、2週間後に100mgの皮下注を行う。初回投与6週後以降は100mgの皮下注を4週間ごとに寛解維持療法として行う。45kg未満の小児では初回115mg/m2(最大200mg)の皮下注を行い、2週間後に60mg/m2(最大100mg)の皮下注を行う。初回投与6週後以降は60mg/m2(最大100mg)の皮下注を4週間ごとに寛解維持療法として行う。(小児への適応は承認されていない)

小児潰瘍性大腸炎の外科療法

手術適応と術式の概要は、成人潰瘍性大腸炎と同様である。小児は成人と比較して重症例の割合が多いため(準)緊急手術となることも多く、適切な手術時期の判断が求められる。相対的手術適応を検討する際には、内科治療への反応性はもちろんのこと、成長障害や学校生活などへの影響、患児・家族の疾患の受け入れ状況までを十分に考慮することが望まれる。成長障害に関しては、術後の成長のcatch upを考慮して思春期発来前または骨端線閉鎖前の手術が推奨される。

また、術前に単一遺伝子異常に伴う腸炎の鑑別も含め潰瘍性大腸炎の診断が確定できない症例では大腸全摘の施行は慎重に判断し、結腸亜全摘にとどめるかdiversion目的で人工肛門造設術のみを行うことを考慮する。

回腸人工肛門を造設した症例では人工肛門からの排液量が多く、特に幼少児では容易に脱水や電解質異常に陥るため注意が必要である。成人同様、周術期のステロイドカバーの方法はエビデンスがないのが現状だが、特に小児患者では小児内分泌疾患の診療に精通した医師の助言に基づき施行すべきである。

小児潰瘍性大腸炎 治療フローチャート

小児潰瘍性大腸炎 治療フローチャート

小児潰瘍性大腸炎 難治例の治療

小児潰瘍性大腸炎 難治例の治療

Pediatric Ulcerative Colitis Activity Index (PUCAI)

Pediatric Ulcerative Colitis Activity Index (PUCAI)

出典: 小児潰瘍性大腸炎治療指針(0.79Mb), 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業 「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」(鈴木班) 平成30年度分担研究報告書 潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針. p21-24, 2019年3月