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診断と治療:潰瘍性大腸炎診断基準

2019年1月改訂

1.定義

主として粘膜を侵し,しばしばびらんや潰瘍を形成する大腸の原因不明のびまん性非特異性炎症である。WHOのCouncil for International Organization of Medical Siences(CIOMS)医科学国際組織委員会で定められた名称と概念は、つぎの通りである。(1973)

特発性大腸炎 idiopathic proctocolitis
An idiopathic, non-specific inflammatory disorder involving primarily the mucosa and submucosa of the colon, especially the rectum. It appears mainly in adults under the age of 30, but may affect children and adults over the age of 50. Its aetiology remains unknown, but immunopathological mechanisms and predisposing psychological factors are believed to be involved. It usually produces a bloody diarrhea and various degrees of systemic involvement, liability to malignant degeneration, if of long duration and affecting the entire colon.

(訳)主として粘膜と粘膜下層をおかす、大腸とくに直腸の特発性,非特異性の炎症性疾患。30歳以下の成人に多いが、小児や50歳以上の年齢層にもみられる。原因は不明で、免疫病理学的機序や心理学的要因の関与が考えられている。通常血性下痢と種々の程度の全身症状を示す。長期にわたり、かつ大腸全体をおかす場合には悪性化の傾向がある。

2.診断の手順

持続性または反復性の粘血便・血性下痢などがあり本症が疑われるときには、理学的検査や血液検査を行い、さらに放射線照射歴、抗菌薬服用歴、海外渡航歴などを聴取する。次に大腸内視鏡検査や生検を行い、必要に応じ注腸X線検査を行って本症に特徴的な腸病変を確認する。また、典型的な血便を伴わず内視鏡所見で本疾患を疑う症例も存在するため、細菌学的・寄生虫学的検査を行うと伴に、上部消化管検査や小腸検査などを行い感染性腸炎や他の炎症性腸疾患などを除外する。こうした検査で多くは2週間から1ヶ月の期間で診断は可能であるが、診断が確定しない場合は inflammatory bowel disease unclassifiedとして経過観察を行う。

3.診断の基準

  • 臨床症状:持続性または反復性の粘血・血便、あるいはその既往がある。
  • ①内視鏡検査:i)粘膜はびまん性におかされ、血管透見像は消失し、粗ぞうまたは細顆粒状を呈する。さらに、もろくて易出血性(接触出血)を伴い、粘血膿性の分泌物が付着しているか、ii)多発性のびらん、潰瘍あるいは偽ポリポーシスを認める。iii)原則として病変は直腸から連続して認める。
    ②注腸X線検査:i)粗ぞうまたは細顆粒状の粘膜表面のびまん性変化、ii)多発性のびらん、潰瘍、iii)偽ポリポーシスを認める。その他、ハウストラの消失(鉛管像)や腸管の狭小・短縮が認められる。
  • 生検組織学的検査:活動期では粘膜全層にびまん性炎症性細胞浸潤、陰窩膿瘍、高度な杯細胞減少が認められる。いずれも非特異的所見であるので、総合的に判断する。寛解期では腺の配列異常(蛇行・分岐)、萎縮が残存する。上記変化は通常直腸から連続性に口側にみられる。

確診例:
[1] AのほかBの①または②、およびCを満たすもの。
[2] Bの①または②、およびCを複数回にわたって満たすもの。
[3] 切除手術または剖検により、肉眼的および組織学的に本症に特徴的な所見を認めるもの。

  • 確診例は下記の疾患が除外できたものとする。細菌性赤痢、クロストリディウム・ディフィシル腸炎、アメーバ性大腸炎、サルモネラ腸炎、カンピロバクタ腸炎、大腸結核、クラミジア腸炎などの感染性腸炎が主体で、その他にクローン病、放射線大腸炎、薬剤性大腸炎、リンパ濾胞増殖症、虚血性大腸炎、腸管型ベーチェット病など
  • 所見が軽度で診断が確実でないものは「疑診」として取り扱い、後日再燃時などに明確な所見が得られた時に本症と「確診」する。
  • 鑑別困難例
    クローン病と潰瘍性大腸炎の鑑別困難例に対しては経過観察を行う。その際、内視鏡や生検所見を含めた臨床像で確定診断がえられない症例はinflammatory bowel disease unclassified(IBDU)とする。また、切除術後標本の病理組織学的な検索を行っても確定診断がえられない症例はindeterminate colitis(IC)とする。経過観察により、いずれかの疾患のより特徴的な所見が出現する場合がある。

4.病態(病型・病期・重症度)

A. 病変の拡がりによる病型分類

全大腸炎 total colitis
左側大腸炎 left-sided colitis
直腸炎 proctitis
右側あるいは区域性大腸炎 right-sided or segmental colitis

  • 左側大腸炎は、病変の範囲が脾彎曲部を越えていないもの。
  • 直腸炎は、前述の診断基準を満たしているが、内視鏡検査により直腸S状部(RS)の口側に正常粘膜を認めるもの。
  • 右側あるいは区域性大腸炎は、クローン病や大腸結核との鑑別が困難で、診断は経過観察や切除手術または剖検の結果を待たねばならないこともある。
  • 虫垂開口部近傍に非連続性病変を認めることがある。
  • 胃十二指腸にびまん性炎症が出現することがある。

B. 病期の分類

活動期 active stage
寛解期 remission stage

  • 活動期は血便を訴え、内視鏡的に血管透見像の消失、易出血性、びらん、または潰瘍などを認める状態。
  • 寛解期は血便が消失し、内視鏡的には活動期の所見が消失し、血管透見像が出現した状態。

C. 臨床的重症度による分類

軽度 mild
中等度 moderate
強度 severe

診断基準は下記の如くである。

  • 顕血便の判定
    (−)血便なし
    (+)排便の半数以下でわずかに血液が付着
    (++)ほとんどの排便時に明らかな血液の混入
    (+++)大部分が血液
  • 軽症の3)、4)、5)の(-)とは37.5℃以上の発熱がない。90/分以上の頻脈がない。Hb 10 g/dL以下の貧血がない、ことを示す。
  • 重症とは1)および2)の他に全身症状である3)または4)のいずれかを満たし、かつ6項目のうち4項目以上を満たすものとする。軽症は6項目すべて満たすものとする。
  • 中等症は重症と軽症の中間にあたるものとする。
  • 重症の中でも特に症状が激しく重篤なものを劇症とし、発症の経過により、急性劇症型と再燃劇症型に分ける。劇症の診断基準は以下の5項目をすべて満たすものとする。
    ① 重症基準を満たしている。
    ② 15回/日以上の血性下痢が続いている。
    ③ 38℃以上の持続する高熱がある。
    ④ 10,000/mm3以上の白血球増多がある。
    ⑤ 強い腹痛がある。

D.バイオマーカーによる活動性・重症度判定

定量的免疫学的便潜血法や便中カルプロテクチンなどのバイオマーカーは活動性・重症度の判定に参考となる。

E.活動期内視鏡的所見による分類

軽度 mild
中等度 moderate
強度 severe

診断基準は下記の如くである。

  • 内視鏡的に観察した範囲で最も所見の強いところで診断する。内視鏡検査は前処置なしで短時間に施行し、必ずしも全大腸を観察する必要はない。

F. 臨床経過による分類

再燃寛解型 relapse-remitting type
慢性持続型 chronic continuous type
急性劇症型(急性電撃型) acute fulminating type
初回発作型 first attack type

  • 慢性持続型は初回発作より6ヵ月以上活動期にあるもの。
  • 急性劇症型(急性電撃型)はきわめて激烈な症状で発症し、中毒性巨大結腸症、穿孔、敗血症などの合併症を伴うことが多い。
  • 初回発作型は発作が1回だけのもの、しかし将来再燃をきたし、再燃寛解型となる可能性が大きい。

G. 病変の肉眼所見による特殊型分類

偽ポリポーシス型
萎縮性大腸炎型

H. 治療反応性に基づく難治性潰瘍性大腸炎の定義

  1. 厳密なステロイド療法にありながら、次のいずれかの条件を満たすもの。
    ①ステロイド抵抗例(プレドニゾロン1-1.5mg/kg/日の1〜2週間投与で効果がない)
    ②ステロイド依存例(ステロイド漸減中の再燃)
  2. ステロイド以外の厳密な内科的治療下にありながら、頻回に再燃をくりかえすあるいは慢性持続型を呈するもの。

I.回腸嚢炎の診断基準

Ⅰ. 概念

回腸嚢炎(pouchitis)は、自然肛門を温存する大腸(亜)全摘術を受けた患者の回腸嚢に発生する非特異的炎症である。原因は不明であるが、多くは潰瘍性大腸炎術後に発生し、家族性大腸腺腫症術後の発生は少ないことより、潰瘍性大腸炎の発症機序との関連が推定されている。

Ⅱ. 回腸嚢炎の診断
1. 項目

a) 臨床症状
1) 排便回数の増加 2) 血便 3) 便意切迫または腹痛 4)発熱(37.8℃以上)

b) 内視鏡検査所見
軽 度:浮腫、顆粒状粘膜、血管透見像消失、軽度の発赤
中等度:アフタ、びらん、小潰瘍、易出血性、膿性粘液
重 度:広範な潰瘍、多発性潰瘍、びまん性発赤、自然出血
*:staple line ulcerのみの場合は、回腸嚢炎の内視鏡所見とは区別して所見を記載する。

2. 診断基準

少なくとも1つの臨床症状を伴い中等度以上の内視鏡所見を認める場合。また、臨床症状に関わらず内視鏡的に重症の所見を認める場合は回腸嚢炎と診断する。除外すべき疾患は、感染性腸炎(サルモネラ腸炎、キャンピロバクタ腸炎、腸結核などの細菌性腸炎、サイトメガロウィルス腸炎などのウィルス腸炎、寄生虫疾患)、縫合不全、骨盤内感染症、術後肛門機能不全、クローン病などがある。抗菌剤をはじめとする治療に反応しない、治療薬剤の休薬が困難、年3回以上の回腸嚢炎による臨床症状の増悪がある症例は「難治例」と定義する。

J.潰瘍性大腸炎術後症例の重症度基準

Ⅰ. 概念と診断基準

潰瘍性大腸炎手術例のうち、以下の症例は術後生活の質(QOL)の低下がみられることから、通常の術後治療に加えて新たな治療、または経過観察が必要であり、難治例としての積極的な治療の継続を必要とする症例である。

1)回腸嚢機能不全
頻回の排便、生活に支障をきたす漏便や排便困難〈注17〉、持続する肛門周囲瘻孔、骨盤内膿瘍の合併など。

2)難治性回腸嚢炎
慢性回腸嚢炎、頻回の回腸嚢炎、長期の治療継続例など〈注18〉。

3)難治性腸管外合併症〈注19〉
難治性壊疽性膿皮症, 難治性ぶどう膜炎、治療継続が必要な末梢関節炎(関節リウマチ合併例を除く)など。

4)大腸以外の高度消化管病変
高度の十二指腸炎、小腸炎など。

5)その他
頻回の脱水などの代謝性合併症など。

  • 常時おむつの使用が必要で肛門周囲のびらんを伴う症例、狭窄などにより自然排便が困難な症例など。
  • I.回腸嚢炎の診断基準の項,Ⅱ-2診断基準における「難治例」に相当する症例。
  • 強直性脊椎炎、仙腸関節炎は指定難病271として追加申請する。また、術後改善しない成長障害は除く
    *:人工肛門関連合併症、術後排尿障害は「ぼうこう又は直腸機能障害」で身体障害者の申請を行う。

出典:潰瘍性大腸炎診断基準(0.61Mb) ,厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業 「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」(鈴木班) 平成30年度分担研究報告書 潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針. p1-4, 2019年3月