JIMROJIMRO

医療関係者の方へ

GMAのこれまでとこれから:GMAのクリニカルパール探求

Adacolumn Clinical Pearl

アダカラムインタビュー記事シリーズ

GMA 20年をこえる臨床知見からの提言

全国の先生方より、消化器および皮膚領域における最新の診療状況を踏まえた上で、様々な視点から顆粒球吸着療法(GMA)の日常診療における活用方法や工夫、メリットや課題についてお話いただきます。

IBD:炎症性腸疾患、UC:潰瘍性大腸炎、CD:クローン病、PP:膿疱性乾癬、PsA:乾癬性関節炎(関節症性乾癬)

※先生のご所属先および役職、治療指針等は掲載時点の情報です

大分県アダカラム
インタビュー記事シリーズVol. 12

IBD専門クリニックにおけるGMAを活用した治療戦略

石田消化器IBDクリニック
院長
石田 哲也 先生

IBD患者の増加に対応するために、外科的介入をはじめとした入院治療を担う基幹病院と、フットワークの良い診療で重症化回避を図るIBD専門クリニックとが協力して治療に臨む"地域医療連携の推進"に期待が集まっています。そこで今回は、IBD専門クリニックにおける患者主体の医療の実際や、安全性を考慮したIBD治療におけるGMAを活用した治療戦略について解説いただきました。

記事を見る

石田消化器IBDクリニックにおけるIBD診療の実際

 石田消化器IBDクリニックは、IBD専門クリニックとして年間に潰瘍性大腸炎(UC)約300例、クローン病(CD)約300例の診療を行っており、大分県において患者数が多い施設の一つとなっています。施設の特徴として、土曜と日曜にもGMAを含む診療を実施することで、IBD患者の仕事や学業をサポートする体制を構築しています。

 さらに、IBD患者の生活およびライフイベントを支えるためには、疾患や治療に対する患者自身の理解が求められることから、日常診療における情報提供はもとより、当クリニックのWebサイトにおいても、"IBDあれこれ"と称して、COVID-19流行下における治療概念や新薬などの情報を掲示しています。

 

IBD診療における総合病院と専門クリニックの役割

 IBD診療においては、患者数増加への対応、通院の際の利便性向上、ひいては治療成績改善のために、IBD専門クリニックと基幹病院との地域医療連携が広がりつつあります。双方が綿密な連携を図りながら、クリニックでは軽症から中等症のIBD患者に対する重症化の回避、基幹病院では中等症以上のIBD患者に対する入院や手術、腸管外合併症への対応などを、それぞれの施設で医療機能を分担し、治療に臨むことが求められているものと考えます【 上段】。

 IBD専門クリニックでは、土曜や日曜の診療や悪化時における速やかな対応が、重症化の回避に寄与しているものと推察されます。さらにこれらの柔軟な対応は、IBD患者と医療スタッフとのラポール(信頼関係)形成にも好影響をもたらし、症状の変化を相談しやすい環境から、更なる重症化の回避も期待されます。

 基幹病院では、治療対象に重症患者が多いことから、分子標的薬を長期投与中のIBD患者も多く、例えばCDに対する抗TNFα抗体製剤の治療抵抗性因子としてのIL-17受容体発現など1)、治療に難渋するケースに対する知見の集積が期待されます。

 一方、IBD専門クリニックにおける薬物療法では、特にUCの軽症~中等症に対する5-ASA製剤による治療の最適化が、効果と安全性の面から重要と考えています2)。その上で、適切な分子標的療法の実施が求められますが、投与にあたっては、感染症への対応が必須となります。

 この際、生命予後にも関わる感染症として、結核やニューモシスチス(カリニ)肺炎などの呼吸器感染症に加え、B型肝炎にも注意が必要です。実際に、チオプリン製剤と抗TNFα抗体製剤の長期併用によってB型肝炎ウイルスが再活性化したとの報告もあり3)、薬剤投与前のスクリーニングと特に既往例に対しては投与開始後に注意深い観察が必要です。

 また、元来IBD患者において合併しやすい帯状疱疹に関しては、分子標的治療において発現リスクがさらに上昇することから、治療前の抗体価測定および不活化ワクチンの接種について、費用面を含めてIBD患者と相談して治療を進める必要があると考えます。

 これら感染症以外でも、分子標的治療では様々な臓器において、予期せぬ副作用が発現する場合も珍しくありません。IBD治療において、分子標的薬は必要不可欠であるだけに、全身に対する注意深い観察や入念な問診、患者が相談しやすい環境を作るために良好なコミュニケーションの推進が求められます。

 

IBD治療におけるGMAの位置付け

 GMAは、UC治療において20年の臨床経験を有しており、これまで蓄積された臨床知見から、安全性が評価されているものと捉えています。このため、安全性を考慮しながら炎症の抑制を図りたい場合の選択肢の一つとして、様々な状況および患者背景のUC患者がGMAの適応となります【 下段】。

 例えば、UCの中でも近年に増加している高齢者および担癌患者、また小児など安全性がより考慮される場合などに、GMAは選択肢の一つになると私は考えます。一方、GMAと他剤との併用により治療強化を図ることで、ステロイド不適応例をはじめとして、入院患者における入院期間短縮も期待されます。

 さらに、比較的病状が軽いUC患者に対して、GMAにより寛解導入を行った際は、分子標的薬を用いることなく、5-ASA製剤のみによる寛解維持療法が可能となる場合がある点も重要と私は考えます。従って、分子標的療法実施前のGMA導入は、効果と安全性はもとより、医療経済的な視点からも意義がある場合があると推察され、長期追跡など今後の更なる知見の集積が望まれます。

 一方、GMAの課題として、週に1~2回の通院と約1時間30分の治療時間を要する点が挙げられます。当クリニックでは、土曜・日曜もGMAを実施していますが、全ての施設がこのような体制ではありません。そこで、地域の透析施設との連携を積極的に推進し、患者に対して利便性に優れたGMA治療環境を提供することが、私たち消化器内科医に求められているのではないでしょうか。IBDに対する地域医療連携において、基幹病院とIBD専門クリニックに加え、今後は透析施設も参加されることを期待しています。

石田消化器IBDクリニック_図表.jpg

1) 石田 哲也 ほか:日本消化器病学会雑誌, 111(suppl-2), A881, 2014 (第56回日本消化器病学会大会, 2014年10月)
2) 石田 哲也:日本消化器病学会雑誌, 115(suppl-1), A334, 2018 (第104回日本消化器病学会総会, 2018年4月)
3) 石田 哲也 ほか:日本消化器病学会雑誌, 109(suppl-2), A855, 2012 (第54回日本消化器病学会大会, 2012年10月)