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GMA20周年特設ページ:GMA治療の歩みと可能性

Adacolumn 20th Aniversary

アダカラムインタビュー記事シリーズ

GMA 20年の臨床知見からの提言

全国のIBD専門の先生方から、最新のIBDにおける治療環境を踏まえた上で、様々な角度からGMAの日常診療における活用方法や工夫、メリットや課題をお話しいただきます。

石川県アダカラム
インタビュー記事シリーズVol. 18

UC診療におけるバイオマーカーの意義とGMAの果たす役割

国立病院機構 金沢医療センター
消化器内科部長 臨床研究部長
加賀谷 尚史 先生

UC診療における下部消化管内視鏡検査は、粘膜の状態を評価するために重要な検査ですが、UC患者に対して負担をかける側面もあります。そこで注目されているのが、便中カルプロテクチンなどのバイオマーカーであり、内視鏡検査のタイミングや治療介入のタイミング判定について、知見の集積が望まれています。そこで今回は、今後のUC診療におけるバイオマーカーの可能性とGMAに期待される役割について伺いました。

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金沢医療センターにおけるIBD診療の実際

 金沢医療センターは、石川県における炎症性腸疾患(IBD)診療の基幹施設としての役割を果たしながら、国立病院機構の使命の一つである臨床研究にも注力しており、難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班による多施設共同研究にも参加しています。

 近年では、「高齢発症および高齢に移行した潰瘍性大腸炎(UC)患者」が増加していますが、当院では軽症から中等症の若年UC患者、特に小中高校生の紹介が増えています。このような若年UC患者の診療にあたっては、身体成長過程への十分な配慮が必要となります。さらに学童期UC患者では、親御さんが過度に心配したり、自分を責めたりする場合も少なくないため、患児本人だけでなく、家族に対する疾患の説明や精神的ケアも治療の一環として重要と考えています。また、内視鏡検査をどのタイミングで行うべきか、患児、親御さんとの十分な相談も必要になりま

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行下において、IBD患者は病院内での感染を恐れて通院を延期したり、免疫抑制作用のある薬剤の使用に不安を感じて治療を自己中断したり、さらに内視鏡検査を拒まれるケースも散見されました。このような場合、検査や治療の重要性について丁寧な説明を行うと共に、感染症リスクを考慮した治療への変更など、患者に寄り添った医療の提供も重要と考えます。その中の一つとして、内視鏡検査の代替として期待されているのが、便中カルプロテクチン(Fecal Calprotectin: FC)などのバイオマーカーの活用です。

 

便中カルプロテクチンなどバイオマーカーによるUCの再燃予測

 UCの病勢予測に向けたバイオマーカーとして、従来、白血球数やCRP、血沈、便潜血検査などが用いられてきましたが、近年本邦の臨床に導入されたFCは、腸管における炎症を反映し、内視鏡的活動性と相関を示す指標として注目されています【1】。

 当院において、UCの再燃予測におけるFCの経時的測定結果の有用性を検討するために、臨床的寛解期に2回のFC測定(平均測定間隔147.1日)を実施した77例について経過を観察しました1)。観察期間中に再燃した群では、FC平均値が初回 836mg/kg、2回目 840mg/kgで、寛解を維持した群の258mg/kgと276mg/kgに比べ、いずれも有意に高い結果でした(p=0.01)。 

 経時的測定の意義を検討するために2回のFC測定値の差を比較しましたが、再燃群平均 3.8mg/kg、寛解維持群平均 18.1mg/kgと群間に有意差を認めず、再燃予測においては絶対値の方が有用でした。FCの経時的変化が再燃予測に有用であるという報告が多いことから、今後の知見の集積が望まれます。

 一方、FCは便検体であるため、検体採取を躊躇するUC患者が一定頻度で見受けられます。そのような場合、血清検体のロイシンリッチα2グリコプロテイン(LRG)が、FCと同様に期待されています。今後のUC再燃予測では、従来のCRPも含め、FCやLRGなど各種マーカーを組み合わせた形の精度向上や、治療介入のタイミングについて、当院もエビデンスの構築に寄与していきたいと考えます。

 

UC薬物療法の現況と非薬物療法としてのGMAの意義

 近年のUCに対する薬物療法では、中等症~重症例に対して多種の生物学的製剤が登場し、選択肢が多様化した一方で、軽症~中等症に対して「5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤を十分量投与する」ことの啓蒙が進んだ点の意義は大きいと考えます。また、一部の症例では、時間依存型とpH依存型の徐放性製剤の剤形変更が、治療効果改善に寄与する可能性もあるのではないかと考えています。

 ステロイドに関しても、漫然と長期間投与されるケースが顕著に減少しており、フォーム(泡)製剤の登場によってアドヒアランスが向上するなど、適正使用が推進されてきている印象があります。

 当院における生物学的製剤の投与状況は、2015年時点でUC 13%、クローン病(CD) 67%でした2)。その後、新規生物学的製剤が登場したにもかかわらず、2020年時点でもUC 15%、CD 67%の投与率と、殆ど変化がありませんでした。生物学的製剤を含む治療薬の選択肢が多様化していても、5-ASA製剤やステロイドといった既存治療は依然として重要であり、むしろ既存治療薬は適正に使用することによって果たすべき役割が大きくなっている印象があります。これは顆粒球吸着療法(GMA)も同様です。

 GMAは非薬物療法であり、他の治療薬との併用も可能な点は特徴の一つと考えます。特に高齢IBD患者では、易感染性や腎機能、他科処方薬を含むポリファーマシーに対する注意が求められるため、GMAは選択肢の一つとして重要と私は考えます。また、高齢者では骨粗鬆症や糖尿病などの併存率が高いことから、ステロイド投与量の抑制が必要となる場合も少なくありませんが、ステロイドとGMAの併用によりステロイド総投与量の減量と離脱が報告されています【2】。

 GMA施行にあたり、外来治療時における通院の負担軽減に向けて、当院では地域医療連携を積極的に推進しています。特に夜間透析を実施している施設との連携は、IBD患者の勤務終了後のGMA施行が可能となるため、日常生活への影響を抑えながら寛解導入を図ることが可能となりました。

 今後は、このような地域医療連携も活用しながら、内視鏡を持たない施設であってもFCなどのバイオマーカーによる病勢把握が進み、バイオマーカーを指標とした治療介入に関するエビデンスの蓄積に期待しています。

金沢医療センター_加賀谷先生_図表.jpg

1) 加賀谷 尚史 ほか:日本消化器病学会雑誌, 117(suppl-2), A740, 2020 (第62回日本消化器病学会大会, 2020年11月)
2) 加賀谷 尚史 ほか:日本消化器病学会雑誌, 113(suppl-2), A773, 2016 (第58回日本消化器病学会大会, 2016年11月)